2008年12月19日
地球が静止する日
キアヌ・リーヴス主演のSFスペクタクル映画だ。1951年に公開された作品のリメイクらしいが、話の内容は現代的なものになっている。球状の物体が出現したり、スタジアムや走行中のトラックが壊れていく予告編を見たわては、もっと壮大な大作なのかと思った。確かに、「環境破壊の限りを尽くしている人類がいなくなると、地球のほかの機能は正常になる」かもしれない。地球外生物体であるクラトゥ(キアヌ・リーヴス)が、人間に姿を変えていた老人から人類のこれまでの歩みを聞いて今後の対応を検討する。彼は、その事情聴取だけで人類を滅亡させると一旦決めてしまう。
その後、微生物学者のヘレン(ジェニファー・コネリー)やその子供ジェイコブ(ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス)との交流で、あういう結末に持っていくのは強引すぎる。予告編がよく出来ているので、もっと奥行きのある映画だと思った。でも、あの予告編以上でも以下でもない。
VFXやあの大きなロボットは、見ごたえがあった。でも、人類は変わることができるといくら涙目で訴えても、我々観客の心には伝わってくるものがないと思った。わては、映画を見たらなるべくいい点を見つけるようにしている。取り上げているテーマは非常にいいと思う。そこで、この映画をどうすればもっと見ごたえがあるものにできるか、ちょっと考えてみた。 続きを読む
2008年12月10日
ワールド・オブ・ライズ
昨日試写会で見た。なかなか当たらないのだが、今回はラッキーだった。リドリー・スコット監督のリアリティーを追及した中東のCIAの活動を描いたスパイアクション映画だ。主演は、レオナルド・ディカプリオとラッセル・クロウだ。現地の工作員に扮したディカプリオの熱演が光っている。イラクから撤退できない泥沼にはまっているアメリカ軍の窮状を、CIA工作員の立場で描いている。なんとかテロ活動をしている親玉を捕まえようとするが、そんなことが簡単にできるわけがない。たとえ一つのグループをつぶしても、他のやつらが立ち上がる。そんなもぐらたたきのような不毛な戦いを、正義の戦いとか世界を救うと言っているアメリカの政治家の欺瞞に満ちたことか。
わてがおもしろいと思ったのは、彼らが乗っている車がグループごとに違うことだ。CIAはもちろんアメ車のSUV、現地の協力者はBMWとかベンツのボロボロの中古車、ヨルダンとかの情報部員はベンツ、イスラム原理主義のテロリストはなんとトヨタのプラダだった。これが実にそれぞれの立場を物語っていて、面白い。
フェリス(レオナルド・ディカプリオ)はアラビア語にも堪能な中東地域の腕の立つCIA工作員で、ホフマン(ラッセル・クロウ)は本国バークレーで指揮を取っている。フェリスはイラクやヨルダンのアンマン、アラブ首長国連盟など各地を飛び回り、標的のテロ組織に近づこうとする。でも、ホフマンは早く手柄を得たいので、ことを急ごうとする。 続きを読む
2008年12月09日
ウォーリー
700年間一人で地球上のゴミをスクラップにし続けて、29世紀まで働いているロボット・ウォーリーのお話だ。22世紀に人類は植物も育たなくした地球を見捨てて、宇宙に住まいを求めた。こういう設定は、アニメなら充分に許せる。この映画のすごいのは、最初の数十分は会話がないことだ。会話がなくても、物語の意味がわかる。一人で鉄くずをスクラップにしてビルのように片付けているウォーリーの前に、宇宙から白くてピカピカのつるりとしたロボット・イヴがやってくる。そのイヴを派遣したのが、誰なのかウォーリーのいる風景を見ているとわかってしまう。
だから、この映画は是非字幕版で見てほしい。字幕を見なくても、画面に伝えたいことが表現されている。色々と深読みできる内容だが、ウォーリーとイヴが一番人間的だと思う。さび付いたロボットのウォーリーと、ピカピカのイヴの質感の映像はほんとうにすごい。音楽がいいので、せりふがないほうがいいかもしれない。
以下は、少しネタばれというか疑問点を挙げます。 続きを読む
2008年12月02日
デス・レース
「バイオハザード」のポール・W・S・アンダーソン監督が、監督・製作・脚本・原案と担当した近未来カー・バイオレンスアクション映画だ。車のアクションもすごいが、銃撃戦に重点が置かれているので車マニアには物足りないだろう。娯楽的B級アクションのお手本みたいな映画で、ゲーム的な要素もプラスされていて面白い。それにしても、今から4年後のアメリカがこうなってしまうと製作者が思っているとは自虐的だ。さらに、使われている車が大排気量のいかにもアメ車ばかりというのも笑ってしまった。物語の展開は、勧善懲悪の娯楽作品なので心配することはない。PG-12なので、人がどんどん死んでしまうが映画の中の話だと割り切ってほしい。
経済が破綻して失業率が何十パーセントにもなった2012年のアメリカで、製鉄所に勤めている主人公ジェンセン(ジェイソン・ステイサム)は首になってしまう。さらに妻殺しの汚名を着せられて、凶悪犯ばかりが集まる孤島の刑務所に収監される。その刑務所は民間企業の運営で、利益は「デス・レース」という車のレースをネット中継して得ていた。 続きを読む
2008年11月28日
ソウ5
わては、「ソウ」、「ソウ2」、「ソウ3」を映画館で見た。でも、「ソウ4」はもういいかと見るのをやめていた。シリーズ物で一作抜いてしまうと、なかなか難しくてわからなくなる。映画館から出た直後は、いやー全然わからないという感想を持った。でも、半日以上たったらなんとなくわかってきた。ジグソウ(トビン・ベル)とその協力者アマンダ(ショウニー・スミス)がいた間は、なんとか一貫性があった。でも、この後継者をジグソウが教育していくお話は、なんだか違うシリーズを見ている感覚を覚えた。
ホフマン刑事(コスタス・マンディロア)とストラム捜査官(スコット・パターソン)の戦いにお話を集中させれば、少しはよかったと思う。今回捕らわれの身になった5人の殺人ゲームと、後継者の解明に焦点を絞るべきだった。もうジグソウがどうのこうのと見せられても、普通のホラー映画になってしまうだけだ。 続きを読む
2008年11月27日
ブラインドネス
「シティ・オブ・ゴッド」や「ナイロビの蜂」で、知られているフェルナンド・メイレレス監督が十年以上前から映画化を望んでいて実現した映画だ。日本・ブラジル・カナダ合作という多国籍の製作者が、ノーベル文学賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴの「白の闇」を映画化した。この映画は簡単な娯楽映画ではないし、原作の世界中の人々が失明するという奇抜な内容を映像に表現するのでワクワクドキドキするものではない。非常にシリアスで、難解だ。でも、わては今の世界そのものが、ほんとうに見ている事態が世界の真実かと問いかけているのだと思う。
医者の妻だけが感染しないで、他の人間がすべて盲目になってしまう設定は、ニュースや新聞で見聞きしていることがほんとうに世界の現実なのか問いかけていると思う。その証拠に、医者が最初に「ほんとうに盲目なら、視野は暗くなっていく」と言っている。これが、エンディングの付箋になっているのだ。 続きを読む
2008年11月20日
ハッピーフライト
冒頭のフライトシュミレーションの墜落というシーンから始まるこの映画は、映画館で見る観客に「ハッピーフライト」を実体験させてくれる。登場人物たちを群像的に描くことで、観客は自分がほんとうにボーイング707に乗っている体験をすることができる。誰が主役というわけではないこの映画は、観客に羽田とホノルルまでの飛行機の旅を体験させることが目的だと思う。ほんとうは、このお話をまじめに描くとパニックアクション映画にもなる。何しろ、2時間飛行して燃料がぎりぎりになる危険を冒しながら、台風の接近する中をどこかの着陸地まで飛ぶのだ。その内容をなんと、アクションコメディにしてしまった。
新人CA(綾瀬はるか)は可愛いだけの感じがしたが、吹石一恵や寺島しのぶのCA役は見事である。また、三本線の副操縦士(田辺誠一)と試験管の機長(時任三郎)のやり取りがとぼけた雰囲気を出していていい。地上の整備士がスパナひとつを無くして全員で探したり、グランドスタッフがダブルブッキングした乗客の処理をする。
田畑智子演じるグランドスタッフが、「さっさと行ってらっしゃい。戻ってくるなよ。」と手を振るシーンがいい。飛行機が飛び立ってしまえば、グランドスタッフは次の仕事にかかれる。整備スタッフが時間に追われるシーンも迫力がある。 続きを読む
2008年11月03日
レッドクリフ Part1
吉川栄治の「三国志」やNHKの人形劇「三国志」を若いときに経験したわては、この「三国志」を元にした「レッドクリフ」を楽しみにしていた。物置に入っている吉川栄治の文庫本をもう一度引っ張り出して、読んでみたくなった。多分、劉備・関羽・張飛の三人が結んだ兄弟の契りや諸葛孔明を軍師に迎えるための三顧の礼などの言葉を知らないと、各登場人物がよくわからないと思う。曹操の人物像も悪者として単純な描き方だけど、それは後の伝承によって変わってきたといわれている。
さて、映画の出来としては戦闘シーンがすばらしい。また人間が多く登場するシーンは、人海戦術で来ているのでよく描かれている。ジョン・ウー監督がアクションを得意としているので、そちらの方面で見ごたえがある。だから、実際の戦闘シーンが多くなるPart2は、相当迫力があるものになっているだろう。今作では、多くの登場人物の性格付けが弱い。
それと、戦闘シーンのテンポとそれ以外のテンポがちぐはぐなので、上映時間が少し長く感じた。でも、曹操が愛人の名前を間違うとか、後編への付箋となる何気ないシーンもある。なかなかあなどれない作品なのだ。ゴロゴロ。 続きを読む
2008年10月30日
ブーリン家の姉妹
「エリザベス」(1998)や、「エリザベス:ゴールデンエイジ」(2007)を両方見たわてにとって、この「ブーリン家の姉妹」という映画は非常に興味があるものだ。なんといっても、スペインの無敵艦隊を破った大英帝国の基礎を作った、エリザベス1世の父ヘンリー8世や生母アン・ブーリンのことを描いているのだ。BBCが製作に協力しているので、歴史的な考証は最新の研究を反映してほぼ正確なのだと思う。
ヘンリー8世が離婚して再婚するために、カトリック教会と対立して英国国教会の基礎を作ったのは有名な話だ。また、当時の女性の地位がいかに政略的に利用されたかよくわかる物語の内容は、残酷なものだ。
この姉妹がブーリン家という上昇志向の強い家に生まれなければ、もっと平和な家庭生活を送れたと思う。でも、歴史を変えていく原動力になった人間を生み出す渦中にいた人々は、こういう劇的な経験をしたのだと思う。見ごたえ十分の歴史ドラマだと思う。
2008年10月27日
ICHI
「座頭市」が、子母沢寛(しもざわかん)という明治末期から昭和43年まで生きた作家のほんの数ページの随筆を原作にしているとは知らなかった。勝新太郎がそのほとんどの姿を作り上げたわけだが、わてはテレビ版しか知らない。映画では北野武の「座頭市」を、わては劇場で見ている。ベネチアで賞を獲得した作品で、タップダンスも取り入れた斬新な作品だった。今回の映画化では綾瀬はるかという線の細い女優が演じるので、心配したが杞憂だった。監督は、曾利文彦だ。
以外や以外、真正面から時代劇にして目が不自由だということをしっかりと扱っている。主人公が盲目だということのほかにも、刀を抜けない侍・十馬(とうま:大沢たかお)も登場させてお話を重層的にしている。悪役の中村獅童ややくざの窪塚洋介が、熱演していてとてもいい。
殺陣では男性主演作に及ばないが、目が見えないで世間のつまはじきにされた者の苦しみをよく表現している。なかなか、面白かった。ゴロゴロ。
2008年10月20日
イーグル・アイ
スピルバーグ製作の「イーグル・アイ」を見た。この題名は映画の内容そのもので、アメリカの象徴のハクトウワシの目ということだ。国家の安全を守る情報システムそのものを題材にした設定は、いかにも時代にマッチしている。
大学を中退したコピー屋の店員ジェリー(シャイア・ラブーフ)が、自宅アパートに届けられた軍事書類や銃や爆薬のためにFBIから追われることになる。FBIの突入寸前にかかってきた電話は、「すぐに逃げろ」という。信じられないでいると一旦捕まるが、次の指示に従うと逃げおうせてしまう。同じように謎の指示で巡り合わされたシングルマザー・レイチェル(ミシェル・モナハン)と、謎の逃走劇が始まる。
ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」に似ていると言った評論家がいたが、まさに本当だった。スピード感溢れる物語は、観客を最後まで飽きさせない。
指令者の正体が明らかかになってからも、指令者の言い分が道理に適っているから面白い。国家の利益に反することをする者を消し去るという行動は、もっともなことなのだ。大統領選が近いこともあって、間違った人を選ばないようにという警告もあるのだろう。そこまで考えると、現在の指導者が適任だとはいえないのか。いやー、面白かった。ゴロゴロ。
大学を中退したコピー屋の店員ジェリー(シャイア・ラブーフ)が、自宅アパートに届けられた軍事書類や銃や爆薬のためにFBIから追われることになる。FBIの突入寸前にかかってきた電話は、「すぐに逃げろ」という。信じられないでいると一旦捕まるが、次の指示に従うと逃げおうせてしまう。同じように謎の指示で巡り合わされたシングルマザー・レイチェル(ミシェル・モナハン)と、謎の逃走劇が始まる。
ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」に似ていると言った評論家がいたが、まさに本当だった。スピード感溢れる物語は、観客を最後まで飽きさせない。
指令者の正体が明らかかになってからも、指令者の言い分が道理に適っているから面白い。国家の利益に反することをする者を消し去るという行動は、もっともなことなのだ。大統領選が近いこともあって、間違った人を選ばないようにという警告もあるのだろう。そこまで考えると、現在の指導者が適任だとはいえないのか。いやー、面白かった。ゴロゴロ。
2008年10月07日
アイアンマン
マーベル・コミックの「アイアンマン」を映画化した作品だ。わては見ていて、モビルスーツを着た日本のアニメの実写版のような錯覚を覚えた。日本のアニメに登場するモビルスーツは巨大だけど、こっちはほぼ等身大で体験している感覚が得られた。世界の軍事工場であるアメリカがこういう自分たちの兵器を破壊する映画を公開するのは、よほど国内で厭戦(えんせん)気分があるのだと思う。苦悩するヒーロー物が多かった実写化だが、この映画は同じ兵器製造会社内に悪者を登場させている。この設定が、観客に与えるイメージをよくしている。
わてが気に入ったのは、アフガンゲリラの基地でガラクタを集めて作ったマーク1、アメリカに帰国後試行錯誤しながらできたマーク2、そして色々な欠点を修正しながら完成したマーク3と徐々に進化していくメカニカルな部分だ。その作り方が、小さな部品の一つ一つにこだわっているので、リアルな描写が可能になっている。鉄人28号などから続いてきたロボットが好きな人には、たまらない映画だ。ゴロゴロ。 続きを読む
2008年10月02日
パコと魔法の絵本
後藤ひろひと作の舞台「ミッドサマーキャロル ガマ王子vsザリガニ魔人」を原作に、「下妻物語」と「嫌われ松子の一生」の中島哲也監督が映画化した。評判を聞いて一応見に行こうと思っていたら、必見の価値のある映画だった。記憶が一日しかもたない少女パコ(アヤカ・ウィルソン)と偏屈もののおやじ:大貫(役所広司)の、交流の物語というのは知っていた。わては前2作を見ているので相当期待したが、全く期待を裏切らない出来だった。笑いどころも泣きどころもしっかりと用意しており、エンディングの意外な展開は予想できない涙を誘った。
奇抜な役柄の設定と派手なデコレーションにCGが、最初はびっくりする。でも、なんだか知らないうちに違和感はなくなり、この舞台となる病院の世界に入ってしまう。両親を交通事故で失い一人だけ生き残ったが、一日しか記憶が続かない少女パコ。ほかにも色々登場する変人の中で、一人で会社を起こして大企業にした大貫の偏屈さはすごい。
その偏屈な大貫も心を奪われてしまうパコの純粋な心持ちは、純粋そのもので全く穢れがない。パコは両親が亡くなったこともわからないで、毎日同じ絵本をとても楽しそうに声を出して読む。大貫にぶたれても、翌日にはそのことを忘れている。そして、大貫の手のぬくもりだけ覚えている。大貫は病院中の人間を駆り出して、ガマ王子の劇を上演しようとする。
続きを読む
2008年09月22日
ウォンテッド
特殊効果もここまでやるかと、驚いてしまう革新的なVFXを使った映画だ。普通のアクションを想定にしていると、こんな映画にはならない。スピードも発想も今までの映画を超越して、こんな映画になったのだと思う。ビルのガラスを突き破って外に飛び出して、向かい側のビルにいる狙撃者に反撃をする。また、車を空中で回転させて、サンルーフから相手を狙撃する。極めつけは、なんと弾丸を自分の意志で曲げるというのだから、びっくりしてしまう。
こんな絶対に無理なことも、この映画を見ているとさも可能なことのように思えてしまう。原作がアメコミとはいえ、よくこんな世界観を作り出したと思う。アンジェリーナ・ジョリーも格好いいけど、最初軟弱なサラリーマンだったジェームズ・マカヴォイがラストにはたくましく見えた。非常に映像に凝っているので、スタイリッシュな映画を見たい方にお勧めだ。
続きを読む






