ノーカントリー

コーエン兄弟監督・脚本のオスカー受賞作を見た。はまり役保安官トミー・りー・ジョーンズとエアボンベを使う殺し屋ジョシュ・フローリン、麻薬取引現場から多額の現金を持ち逃げした男ハビエル・バルデムの追跡劇が冷酷なタッチで描かれる。

感情を持たない殺し屋が、すばらしい存在感を持っている。ベトナム戦争の帰還兵だというだけで国境を通過できるシーンがあるが、それは皮肉にしか思えない。

普通の人間が簡単に殺人を犯す、全くおかしな世の中になったものだ。そのなかで、唯一秩序を持っているのが殺し屋とは、なんという不条理だろう。ゴロゴロ。詳しい解説は、わてのHPの「ノーカントリー」に書いた。

追記には、予告編をアップした。なおこの動画は、著作権はクリアーです。


2008年4月2日 22時40分
コーマック・マッカーシーの小説「血と暴力の国」を原作に、コーエン兄弟が監督・脚本・編集を担当して映画化した衝撃のバイオレンス作品だ。2007年度アカデミー賞に8部門ノミネートされ、作品賞・監督賞・脚色賞や助演男優賞(ハビエル・バルデム)の4部門を獲得した。非常にシリアスで、観るものに娯楽的な気安さを与えない映画だ。暴力の権化みたいな殺し屋の存在感と不死身さが、観ていて恐しくなった。1980年代が舞台ではあるが、この殺し屋は世界の警察を気取っている現在のアメリカを象徴している。よくもこんな映画を作って、アカデミー賞作品賞を与えるとはさすがハリウッドだ。

ベトナム戦争が終わって十数年経過した1980年代、テキサス州のメキシコ国境の近くでルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)は、麻薬取引の現場に遭遇する。山の上から見ると車数台が止まっていて、動いている人間がいない。近づいてみると、全員死亡していてピックアップトラックの荷台にいっぱいの麻薬と、他の車に200万ドルを見つける。モスは、やばそうだと思いつつ200万ドルの入ったかばんを持って帰る。自宅に帰ったモスは、妻のカーラ・ジーン(ケリー・マクドナルド)を実家に帰し、自分も家を出る。

モスがかばんを持ち去った後、すぐにアントン・シガー(ハビエル・バルデム)が組織の人間に案内されてやってくる。現場を確認したシガーは、案内してくれた二人の人間をためらうことなく殺す。そして、モスが現金の入ったかばんを持ち逃げしたことを知り、追跡をはじめる。その直後、保安官助手に連行されるが、シガーは全くあわてない。事務所に一人しかいないことがわかると、シガーはその助手を手錠が腕にはめられたまま首を絞めて殺す。保安官助手が暴れて、床に靴の跡を無数につけても止めをさす非常な殺し屋ぶりを見せる。

その後、事務所に到着したエド・トム・ベル保安官(トミー・リー・ジョーンズ)が、シガーとモスの追跡を始める。でも、組織はシガーだけでは心もとないと別の殺し屋も派遣する。シガーの武器は、牛の始末に使われるボルト・ピストルという圧縮空気を高圧で発射する空気銃のようなものだ。ボンベを片手に持ちながら、なんのためらいもなく人を殺すシガーは、まさに殺人兵器だ。モスは妻のジーンも命の危険にさらされたことを知るが、シガーと対決する。

三つ巴の逃走劇の結果を詳細に書かないが、交通事故で負傷しても足を引きずって歩き続けるシガーの不死身さは尋常ではない。このシガーという殺し屋は、戦争を起こすのが好きなアメリカそのものである。また、圧縮空気で人を殺す意味は、なんでも武器にできるということを示している。また、その武器が牛を殺すのに使われているのは、アメリカ人が好んで食べる牛肉の供給元であることを意味していると思う。そこまで考えると、この映画の狙いは皮肉たっぷりの内容なのだ。







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