のだめカンタービレ最終楽章前編

テレビドラマ「のだめカンタービレ」を、全編ヨーロッパロケで映画化した作品だ。指揮者千秋先輩(玉木宏)とピアニストのだめ(上野樹里)を中心に、クラシック音楽を題材に大ブームを起こしたドラマが映画になった。原作の漫画は二ノ宮知子で、監督はドラマの演出をした武内英樹だ。クラシック音楽をテーマにした映画は「アマデウス」や「戦場のピアニスト」や「奇跡のシンフォニー」など、真正面からまじめに描いた作品が多い。でも、これはコミカルなタッチを残した半分お笑いの、クラシック音楽をテーマにした映画だ。特にのだめ(野田恵)のおおげさな感情表現が受け入れられないと、見るのが苦痛になるだろう。

わてはドラマも時々見ていたし、スペシャル版も見た。竹中直人演じるフランツ・シュトレーゼマン自体が、あり得ない音楽家だろう。でも、登場するキャストがどこにでもいる普通の人間と似ていればいるほど、この映画の世界が身近に感じられる。登場人物は身近ではあるが、千秋真一の指揮者の動作やのだめのピアノ演奏やヴァイオリンやオーボエの演奏演技は、相当の練習をしたという成果がわかる。特に千秋の指揮ぶりは、プラティニ国際音楽コンクールで優勝争いをしたジャンよりも、格段にうまい。

音楽コンクールで優勝したからといってすぐに仕事があるとは限らないのは周知だが、千秋の場合はなかなか過酷な条件が待っている。パリ在住でギャラの安い指揮者というだけで、「ルー・マルレ・オーケストラ」の常任指揮者に指名される。常任指揮者という地位が簡単に得られるわけがないのだが、それなりの理由があった。資金不足・練習不足・力量低下・人気低下という悪循環に陥っている、貧乏オケだったのだ。

最初のラヴェルの「ボレロ」をあれほど、下手に演奏するのは見事だと思う。チェコのブルノ・フィルハーモニックやウィーンにあるフラテツ・クラーロヴェーフィルの協力を得て、実際のコンサートホールでロケをしている。その製作者の本気度が、画面を通じて痛いほど伝わってきた。のだめのトルコ行進曲もいいけど、千秋が最後に指揮するチャイコフスキーの「1812年」がすばらしい。

のだめと千秋の恋模様も気になるが、千秋がダメダメオーケストラを変化させる過程がいい。ファゴットの古い形の楽器バソン奏者がいたり、頑固一徹のバンドマスターが存在感を見せている。次回作につながる終わり方も、のだめの成長を予感させる。後編を見るのが、楽しみだ。



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この記事へのコメント
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Posted by 日本インターネット映画大賞 at 2009年12月24日 00:17
日本インターネットさん、ご丁寧にありがとう。ゴロゴロ。
Posted by とらちゃん at 2009年12月24日 16:09
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