17歳の肖像

4月に公開されて、やっとわが地方にやってきたのでさっそくTOHOシネマズららぽーと磐田で見た。原題「AN EDUCATION」という言葉からわかるようになんのために勉強するのかという根本的な人間のあり方に、真正面から答えを示してくれた傑作だ。ジャーナリストであるリン・バーバーの短編を原作に、ロネ・シェルフィグが監督しイギリス本国など各国で絶賛された映画だ。主演のキャリー・マリガンは、本作でブレイクした。

ロンドン郊外で暮らすジェニー(キャリー・マリガン)は、16歳の高校生だ。クラスでも一番の優等生で名門オックスフォードを目指していて、教育熱心な父ジャック(アルフレッド・モリナ)と母マージョリー(カーラ・セイモア)と暮らしている。1961年なので、第二次大戦の傷跡がいえた時代だ。新しい時代の到来を予想している父は、娘を大学に行かせようと必死だ。弦楽サークルでチェロを演奏しているのも、父は受験対策だと言い切る。

苦手な教科はラテン語だけというジェニーは、同級生の誰よりも大人びていて芸術の流行にも敏感だ。フランス語も話せるし、シャンソンのレコードをよく聞いている。学校の勉強は退屈で、何のために大学に進学して勉強を続けないといけないか理解できない。そんなある日、チェロを持って帰宅しようとして雨がザーザー降ってくる。そこに車で通りかかった30代の男性デイヴィッド(ピーター・サースガード)と知り合い、だんだん親しくなる。

紳士的で両親にも会って話をしてくれるデイヴィッドに、ジェニーは心を許していく。両親もユーモアのセンスがあり、オックスフォードの教授C.S.ルイスと知り合いだというデイヴィッドを信用する。最初は教会でのクラシックのコンサートからナイトクラブ、オックスフォードへの泊りがけの旅行と深入りしていく。

11世紀に設立されたオックスフォード大学、世界一といってもいい学びやに入学できる学力を持っていても世間の渡り方を知らない。16、17歳の少女は体が大人になっても、心はまだまだ子供である。両親でさえ騙されてしまうのだから、ジェニーを責めるのは無理な相談だろう。大人の観客なら、留守宅に忍び込んで古地図を持ってきてしまったり「ナルニア国物語」の作者のサインを真似た段階でデイヴィッドたちが偽物だとわかる。そして、ジェニーが傷つくだろうと予想できる。

でも、この映画の作り手は説教くさい演出を選ばなかった。ジェニーが経験したお洒落な格好、オークションの興奮、ナイトクラブの音楽、パリ旅行の楽しさを心底楽しんでいるのを丁寧に描いてくれた。高校の制服が似合うキャリー・マリガンは、パリで見せたオードリー・ヘップバーンのようなファッションの似合う大人の女性まで演じきっている。ジェリーが担任の教師スタッブス(オリヴィア・ウィリアムズ)に「Help me」と言ったあとの、後日談がすばらしい。高校生はもとより、教育関係者の方々や子育て中の親御さんなどすべての方に自信を持ってお勧めする。



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