借りぐらしのアリエッティ

1952年にイギリスで出版されたメアリー・ノートンの「床下の小人たち」を原作に、脚本宮崎駿・丹波圭子、監督米林宏昌で作られたスタジオジブリのアニメ映画だ。主人公の少年翔(神木隆之介)が人類の人口を67億人と言っているので、時代設定は2010年の現代より数年前だろうか。現代の新しい家は機密性が優れていて、あいまいな存在を許さない。でも、翔の祖母の家は隙間がたくさんあって色々な生物が共存している。今回のスタジオジブリの作品は、非常に優れた問題提起をしている。

この少年が1週間滞在する家は、縁の下に土台となる石があってその上に柱が立っている。さらに庭があって小川も流れている大きな屋敷だ。こういう古い家には、なにか不思議な存在があってもおかしくない。身長10cmのアリエッティ一家は人間の姿を映す鏡のような存在で、翔が「君たちは滅び行く種族だ」というのは人間のおごりだ。お手伝いさんのハル(樹木希林)が、アリエッティ(志田未来)の母ホミリー(大竹しのぶ)を捕まえるのは自分以外の存在を許さないからだ。

アリエッティは14歳になったばかりで、外の世界を知らない。父ポッド(三浦友一)といっしょに「借り」に出る。小人たちは人間に見られないようにして生きている。見られたら、「借りぐらし」ができなくなるからだ。角砂糖は一個うまくゲットできたけど、ティッシュを一枚引き抜くときにアリエッティはベッドで寝ていた翔に姿を見られてしまう。父からは絶対に人間と接触するなと言われるし、母は恐怖に震えるばかりだ。

心臓の手術を1週間後に控えた翔は、命のはかなさを知っていておごる部分がない。ただ、小さなアリエッティたちと仲良くなりたいだけの気持ちで置手紙をしたりする。アリエッティも直感で翔が悪い人間ではないとわかったので、近づいていく。でも、人間の中には興味本位だけで生き物を集めようとする、お手伝いさんのハルのような人がいる。

「人類が67億人もいて、たくさんの生物が滅んできた。君たちは滅び行く種族なんだ。」と翔が言うシーンは、なぜか彼の口だけしか映さない。それは、人間全体がそのような思いあがった考えを持っていることを表現している。小人たちがほんとうに弱い種族なら、スピラー(藤原達也)のような昆虫を狩りして生きているものはいない。

ほんとうに危うい存在は、自分たちこそ地球を支配していると思い込んた種族だろう。人間はもう半分そうなりかけている。このアニメは、非常にわかりやすい。自信を持ってお勧めできる。人間は地球を「借りぐらし」していることを忘れないために、是非この映画を見て欲しい。そんな難しいことを考えなくても、楽しいけど。



同じカテゴリー(2010年映画)の記事
最後の忠臣蔵
最後の忠臣蔵(2010-12-30 00:10)

バーレスク
バーレスク(2010-12-20 22:25)

ノルウェイの森
ノルウェイの森(2010-12-13 22:06)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
借りぐらしのアリエッティ
    コメント(0)