ソルト

アンジェリーナ・ジョリー主演のハードボイルドアクション映画だ。出演作を自分で選べる立場にある彼女は、自分のチャレンジ精神を十二分に発揮している。スタントも自分でやったというアンジェリーナの女優魂には、敬服する。多少エンターテイメントというか娯楽性があるかと思ったが、とことんストイックな内容だった。これは、ある意味すごい挑戦だと思う。顔に殴られた跡までつけて、リアルな演技をした。脚本のカート・ウィマー、監督のフィリップ・ノイスもすばらしい。

冒頭のある国での拷問シーンがすごい。イヴリン・ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)が手足を伸ばして縛られて、口に漏斗を入れて水を飲まされている。CIAのエージェントは、筋金入りだ。顔の形が変わるくらい殴られても、白状しない。蝶の研究家の夫の捨て身の行動と、スパイ交換という都合のいい制度のおかげでアメリカに帰国できる。ソルトは、もうCIAを引退して夫と暮らそうと思っていた。

ところが、上司のウィンター(リーヴ・シュレイバー)と定時で帰ろうとしたら、ロシアからの亡命者を確保したと連絡が来る。少しだけの約束で戻り、ソルトが尋問室に入ると亡命者オルロフ(ダニエル・オリブルフスキー)が饒舌に語り始める。アメリカ副大統領の葬儀に出席するロシアの大統領を暗殺するために、スパイが派遣されたという。その名前が、イヴリン・ソルト本人だというのだ。イヴリンは同僚に言い訳をするが、別室に監禁されてしまう。ソルトは消火器を使った装置を作り、脱出に成功する。

そこからの展開が実にスピード感溢れる演出で、思いつかない物語に突入する。金髪を黒く染めたり、ハイウェイから下の道に飛び移ったり、バイクで逃げたりと見せ場がたっぷりとある。スタンガンを使った車の運転手のアクセルを踏ませる演出には、びっくりする。教会の地下へ行くために、地下鉄をストップさせる方法も手が込んでいる。

冷戦時代にKGBが考えたようなことを現在もやっているのは、最近逮捕されてスパイ交換されたアンナ・チャップマンの存在が証明している。子供の頃から訓練して、スペシャリストにすればアメリカ人になりきれるだろう。

そして、このソルトのように自分の宿命を背負いつつ人生の計画を立てられる人間なら、ホワイトハウスの地下深くまで到達することも可能かもしれない。そんな妄想が現実だと思えるほど、ハードな演出だった。エンディングもおよそ、アメリカ映画らしくない。見ごたえ十分の作品だ。本来はトム・クルーズが主役のはずだったが、アンジェリーナ・ジョリーに替わっても全然見劣りしない。彼女のキャリアアップになったと思う。



同じカテゴリー(2010年映画)の記事
最後の忠臣蔵
最後の忠臣蔵(2010-12-30 00:10)

バーレスク
バーレスク(2010-12-20 22:25)

ノルウェイの森
ノルウェイの森(2010-12-13 22:06)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
ソルト
    コメント(0)