SPACE BATTLESSHIP ヤマト

1974年から放送されたTVアニメをわては、夢中になって見ていた。その世代にとっては、実写版映画ができるとは思いもしなかった。「宇宙戦艦ヤマト」の雰囲気をそのままに映画化されている。「ワープ」と「波動砲発射」という台詞に、我々は心が踊る。ひげもじゃの沖田艦長(山崎努)や機関長の徳川彦左衛門(西田敏行)にのんべえの佐渡先生(高島礼子)が原作の味を残していて、古代進(木村拓哉)と森雪(黒木メイサ)のカップルが似合っている。VFXも水準をクリアーしていて、ヤマトが敵の集中砲火を浴びながら突進するシーンでは目頭が熱くなった。地球からイスカンダルまでの往復の物語をしっかりと1本の映画に収めてくれて、大満足なのだ。

幸せの青い鳥の逸話にあるように、ガミラス星人を正体不明の融合した生命体にしたことがこの映画の成功の一因になった。沖田艦長と古代守(堤真一)との確執、守の弟古代進が地球防衛軍を除隊した理由、古代と森雪が最初反発しているのが変わっていく様子、などなどの登場人物の描写が大変に丁寧になった。他にも、真田志郎(柳葉敏郎)や島大介(緒形直人)のクルーたちや戦闘部隊の斉藤始(池内博之)のガッツある演技もいい。パイロットの加藤(波岡一喜)たちも生き生きとしている。

古代進は地球防衛軍をやめて、放射能で汚染された地球でレアメタルを採取して生活している。地球には2199年の5年前からガミラス星人の遊星爆弾が落下してきて、緑の地上は茶色に変わっていた。地下に逃げた人類がわずかに存在しており、その人類もあと1年しか生きられない。古代が地上に出ていたとき、何かの物体が落下する。それは、14万8千光年離れたイスカンダルから届いた通信カプセルだった。その中には、イスカンダルの位置や波動エンジンの設計図に放射能除去装置がイスカンダルにあるという情報もあった。

地球防衛軍は宇宙戦艦ヤマトを作り、乗組員を募集する。その中には、古代進も含まれていた。ガミラス星人は、地球防衛軍が開発した新兵器に対抗する方法をすぐに見つけ出し、学習する能力があった。一度、宇宙戦艦ヤマトの能力を見せてしまうと、すぐにそれを凌駕する対抗策が出現する可能性がある。その危険を冒しても、ヤマトの乗組員ははるかかなたの宇宙を目指していく。

この映画のすばらしい点は、古代進の人間的な成長をしっかりと描いていることだ。家族を戦闘で失った彼は、冷静な判断を常に下す沖田艦長を憎んでいる。兄の守を見捨てたのが、沖田艦長だったからだ。同じ船に乗り込んで、古代は艦長の命令を無理して独房に入れられる。艦長が指揮を取れない健康状態になって、艦長代理になった古代は責任者としての重圧を感じる。そして、なぜ沖田艦長が過去の冷静な判断ができたのか学んでいく。

おもしろいのは、医者の高島礼子が猫を抱いていていつも一升瓶をそばに置いていることだ。アニメの設定にこだわっている点と、ガミラス星人の大幅な変更が対照的だ。わては、ガミラス星人の無機質な描き方に賛成だ。でも、イスカンダルに到着してからの表裏一体という説明には、ちょっと疑問を覚えた。いずれにしても、大ヒットは間違いない。

放射能除去装置についての解釈を書いておきます。白い字にしておくので、映画を見終わった方だけ見てね。反転すると読むことができます。
どうも、放射能除去装置はなかったと思う。沖田艦長が言っているように、イスカンダルが送ってきたのは波動エンジンの設計図とイスカンダルの位置だけだ。ではなぜ沖田艦長や藤堂平九郎(橋爪功)が、嘘を言ったのか。それは、生存者を絶望させないための作戦だった。

また、古代進がイスカンダルからのカプセルの落下に遭遇しても生きていたことが、彼の身体的能力の特異性を物語っている。そして、イスカンダルのエネルギーが宿った森雪の体と、森雪と古代との間にできた子供の体を分析すれば、放射能に対抗できる方法が見つかるのではないか。その方法は、必ずしも物理的なものでなく、遺伝子工学の分野の方法でもいいいのだと思う。ラストシーンで、森雪とその子供の周りにあったクレーターは遊星爆弾の落下跡だろう。
以上が、わての放射能除去装置についての推理だ。



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