完全なる報復

ジェラルド・バトラーが製作・主演し、ジェイミー・フォックスが共演しているアメリカの司法取引の問題点浮き彫りにした衝撃的作品だ。ジェラルド・バトラーが作った映画制作会社イーブルツインズの処女作になるということで、大変に意欲的な内容になっている。

自宅に侵入した強盗によって家族を殺され自分も重傷を負う。その犯人は司法取引によって起訴されて有罪になるが、主犯格が数年の禁固刑ですんでしまう。検事が有罪率を維持するために、なんとしても有罪にしたかったことが原因だ。犯罪被害者が復讐を実行する映画だけど、確実に有罪に持ち込めない捜査をした警察や面子を大切にする検察の姿勢も問題が多い。主人公の実行する復讐が緻密に計算し尽されていて、空恐ろしく感じた。もはや、何が正義なのかわからない。

以下後日。司法取引について調べてみた。陪審員制のアメリカでよく採用されていて、証拠が不十分だったり有能な弁護士がつくと無罪にされてしまう場合がある。それを防ぐために、量刑が変わってもいいので有罪にするために犯人側と検察が取引をする。共犯者がいる場合に、どちらかと司法取引をして片方の罪を重くする場合がある。この映画で描かれているのも、まさにこのケースだ。この矛盾をアメリカの建国記念の建物がいっぱいあるフィラデルフィアを舞台にして撮影したことが、製作者の狙いだ。

クライド(ジェラルド・バトラー)の妻子を殺した主犯格のダービーが数年の禁固刑で、共犯のエイムズが死刑判決を受ける。検事のニック・ライス(ジェイミー・フォックス)は、同じような司法取引を何度もしているので特に気にしていない。判決から10年後にエイムズの死刑執行に立ち会ったとき、安楽死するはずが苦しみもだえて死ぬのを目撃する。前代未聞も事態に、仰天する検事たちに恐怖の事件が襲い掛かる。

主犯格のダービーの家に向かった警察は、彼に逃げられてしまう。しかも、数日後ダービーは全身を切り刻まれた状態で見つかる。すぐに疑いはクライドに掛かり、警察が駆けつけるとあっさりと逮捕されてしまう。刑務所にすぐに入るが、簡単に自供しない。次々に条件を要求して、時間が守られないと事件の関係者が死んでいく。ダービーの弁護士は監禁されて、判決を下した裁判官は携帯電話の爆発で、さらにはライスの同僚のサラ(レスリー・ビブ)たちは車に仕掛けた爆弾で死んでしまう。

独房に移されても、事件が続いていくのだからすごい執念だ。十年間復讐のために緻密な準備をしてきたクライドに対抗するには、もはや普通のやり方では通じない。リモコン操作で対戦車機関銃を発射したり、携帯電話の着信でナパーム爆弾を爆発させるのは、個人レベルの復讐とはいえないだろう。フィラデルフィアの市庁舎を狙う段階にあっては、国家に復讐しているという意味になる。実際に、国防総省の遠隔暗殺部隊のエージェントだったというクライドは、アメリカ以外の国では実績を残していたのだろう。なんという皮肉な物語なのか。



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