阪急電車 片道15分の奇跡

有川浩の短編小説集「阪急電車」を、中谷美紀・戸田恵梨香・宮本信子らの豪華出演者で映画化した群像劇だ。実際に存在する今津線という八つの駅からなる阪急電鉄の一路線を舞台に、人間関係のもつれに悩んでいる登場人物たちが新しい一歩を歩みだすまでを丁寧に描いている。その中で一番存在感を放っているのが宮本信子で、中谷美紀のウェディングドレスを着てふられた婚約者の結婚式に列席するシーンも爽快だ。脚本が非常にすばらしく、ローカルロケ映画のお手本になる秀作だ。特に往路で物語が広げられ、復路で収束するアイディアが光っている。

誰のエピソードが一番先なのかわからなくなっている。宝塚か西宮北口まで8駅だけの阪急今津線沿線に住む人たちが、各駅から乗り込んできて偶然居合わせた乗客とのふれあいから人生の次のステップに踏み出す。一番重要な役どころは、孫亜美(芦田愛菜)を連れた時江(宮本信子)だろう。彼女は嫁に感謝されない工芸品をプレゼントして孫と電車に乗る。嫁に感謝されていないと知っていても、それを全く気にしていない。人生長く生きているので、相談相手になれる経験がある。

OLの翔子(中谷美紀)は長年付き合った婚約者を後輩に寝取られて、結婚式に出席するという条件で別れる。結婚式当日には、花嫁衣裳のような純白のドレスに身を包んで駅のホームに立ち堂々と乗りこんでいく。新郎新婦の入場シーンでも嫌味たっぷりで座っている。ところが式場の係員から引きで物を持たされて、追い出されてしまう。そのままの格好で帰りの電車に乗って、亜美からお嫁さんがいると指摘される。そこで時江が話し相手になる。

他にも、彼氏のDVが怖くて別れられない女子大生のミサ(戸田恵梨香)。庶民的や主婦康江(南果歩)は高級レストランのランチなどによく連れ立っていくPTAの仲間の誘いを断れない。地方出身の権田原美帆(谷村美月)は山菜ヲタクで、同じ大学の小阪圭一(勝地涼)は軍事ヲタクで友人ができない。年上の会社員と付き合っている女子高生の悦子(有村架純)は難関大学を受験するかどうかで悩んでいる。

まず翔子が救われて、ミサも彼氏といるところを時江に救われる。化学反応がおきるように次々と登場人物たちが自分を取り戻していく様子は、爽快だ。脚本がうまいので、違和感なく物語にのっていける。復路を半年後にしたことで、それぞれの変わった様子も確認できる。沿線にある名所がチラリとしか出てこない演出も心憎い。笑うシーンもあるのでストレス解消にもってこいだ。お勧めの映画だ。



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