スカイラインー征服ー

VFXスタジオ「ハイドラックス」の設立者グレッグ&コリン・ストラウス兄弟が、監督と製作を担当して撮影コスト50万ドル(4千万円)と特殊効果に1千万ドル(8億円)をかけて作った宇宙人侵略の映画だ。特殊効果(VFX)のシーンは実に800に及び、メジャー系の大作を上回る。スタッフは20人たらずで、監督の自宅で3日間ロケをした。映画で用いている車両はすべてスタッフの持ち物だという。撮影期間は50日間で、ブルーバックの撮影は一日だけだという。宣伝があまり行われていないのは、インディペンデント系の製作だからだろう。

日本の怪獣映画「ゴジラ」シリーズに影響を受けた監督は、こういう単純な映画を作りたかったという。ロスの高級マンションの立ち並ぶ一角に突然未確認飛行物体が出現して、三日間の出来事を描写している。物語は単純で、未確認飛行物体から青白い光が出て人々が吸い上げられる。登場人物は抵抗するが、人類はほとんどが征服されてしまう。ところが、田舎から出てきたカップルがある結末を迎えて生き残る。ハリウッドのメジャー系映画とは全く違う作風で、非常におもしろいのだ。

ジャロッド(エリック・バルフォー)とエレイン(スコッティー・トンプソン)は、田舎からロスの友人テリー(ドナルド・フェイソン)のところにやってくる。二人が早朝まぶしい光で目覚めたところで、尋常でない状況が起きる。ペントハウスに寝ていた男性が一人光に魅入られて窓を開けて飛行物体に捕獲されてしまう。次に15時間前の飛行機の中にいる二人の様子を描いてくれるので、どういう経過で二人がペントハウスに来たのかしっかりと理解できる。

エレインがジャロッドの子供を妊娠していることがわかるが、ジャロッドはまだ結婚する気もなく父になる準備もできていない。映画俳優として成功したらしいテリーは、女性関係も盛んで見境がない。ところが、管理人らしいオリバー(デヴィッド・ザヤス)は近所の苦情を伝える。テリーたちのどんちゃん騒ぎを注意しに来たのだ。男女のささいないさかいや地位を利用して人の人生に影響を及ぼそうとする人間など、地球規模の危機の前には無意味だ。

最新鋭の戦闘機が宇宙生物らしいものが操作している飛行物体や、怪物に反撃を加える。ヘリコプターでやってきた特殊部隊も反撃する。それを見てある者は屋上へ出ようと主張し、ある者は部屋に残っていようとする。ジャロッドは青白い光を短い時間だが見たので、身体に変調が出てくる。それでも、ジャロッドはエレインを連れてより安全な屋上へ出る。斧を持ったジャロッドは宇宙生物の影響を受けて、人間以上の力で怪物たちと戦う。

海の方向へ逃げようと主張するのは、かつての大航海時代を思い起こさせる。海が安全だという保障はどこにもない。戦いの途中でジャロッドが怪物の身体から取り出すのは、人間の脳と脊髄に似ている。結局二人は、飛行物体に吸収されてしまう。でも、身ごもったエレインと変身したジャロッドはお互いに愛し合う存在に変化していた。なんとも皮肉な結末で、逆説的だと思った。人間の姿でいるよりも、怪物になってからの方がお互いを思いやることができるとは。

1千万ドル(8億円)足らずの製作費で、2011年1月時点の全世界興行収入6500万ドル(約52億円)稼いでいる。日本での公開が全世界で一番遅いとは、ずいぶんな扱いだな。IMDb(Skyline)参照。ゴロゴロ。



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