ツリー・オブ・ライフ

名匠テレンス・マリックが脚本・監督を担当した、旧約聖書の創世記の世界感と1950年代の強権的父親を持った家族の物語が融合された映画だ。説明的セリフが一切ないので、映像から伝わってくる事象を理解しながら物語についていく必要がある。聖書を読んだことがある方やキリスト教の世界感がわからないと、つまらない内容になるだろう。あまり親切な脚本ではないので、いくらカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞したからという理由で見ないほうがいい。逆にこの映画に共感できる人は、洋画を相当見慣れていると思う。わては、途中から天地創造の映像が出てきたのでその方向性で見ることができた。

芸術的に優れた映画には、俳優自ら出演を希望するものだ。ブラッド・ピットは最初製作者で加わったけど、主演の父親役を快く引き受けた。オスカー常連のショーン・ペンが息子役で、年齢的に若いピットが父親役になるのだから物語に重みが増した。重電系会社のサラリーマンであるオブライエン(ブラッド・ピット)は技術者であり、会社のために特許をいくつも取るほど優秀だ。でも、出世街道からは外れていて、子供達には自分のような会社人間になってほしくない。そのために、強く生きて欲しいとスパルタ式な子育てをしていた。

母親(ジェシカ・チャステイン)は三人の子供をこよなく愛していて、夫も愛していたが子育てについては夫婦の話し合いをしなかった。実業家として成功した長男のジャック(ショーン・ペン)は初老になって、何か満たされないものを感じて子供時代の父との思い出を振り返っていた。次男のR.L.(ララミー・エップラー)を川遊びの事故で亡くして、その前後のことを思い起こす。長男のジャック(ハンター・マクラケン)はちょうど自我に目覚め、父の言うことが必ずしも正しくないと気がつく。

結婚した当時の母と父は、お互いに愛し合っていた。父は自分がこれ以上出世できないと悟ると、子供には強く生きて実業家になってほしいと思う。けんかに勝つ方法を教え、正直ものになるなと教える。正直者は利用されるだけだと教え込む。そんな父に反発したジャックは、弟たちや近所の仲間と空き家の窓ガラスを割ったり冒険をしていく。そして、ジャックは女性の留守宅に忍び込み下着を盗み、証拠が残らないように川に流して捨てる。それは、超えてはいけない一線だった。母には、「父に従っているだけの人間」だと言ってしまう。

でも、もっと思い出してみると、父が工場閉鎖で一家で引っ越したことを覚えていた。世界をまたに駆けて活躍した父でも、サラリーマンという境遇からは抜け出せなかった。正直者であった父は、利用されて一家を守るために働いてくれた。次男のR.L.を事故で亡くしたのは、父のせいではなくて自分のせいだったかもしれない。ところが、監督・脚本のテレンス・マリックは誰のせいでもないと言っているみたいだ。

神は天と地を創り、光を生み出し、水を上下に分けた。大地と海を分け、植物を創り水に住む生き物を作った。恐竜が創られて巨大隕石によって滅亡する。その後、家畜・動物などが地上に生まれ人間が最後に創造された。その大きな生命のつながりの中では、誰でもいつか死ぬけどつながりはずっと続くのだ。ショーン・ペンはその神の営みを垣間見て、ひまざまついてしまう。The tree of life(生命の系図)は、途切れることがないのだ。

この映画のモデル的存在とされる旧約聖書の「ヨブ記」、解説書で一番売れているのが下記の本です。
旧約聖書 ヨブ記 (岩波文庫 青 801-4)



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