シャンハイ    SHANGHAI

上海出身の映画製作者マイク・メダヴォイが企画して、太平洋戦争勃発直前の上海を舞台にして入り乱れた租界に暮らす男女の様子を描いたサスペンスだ。監督はミカエル・ハフストローム、ジョン・キューザックやコン・リー、チョウ・ユンファに渡辺謙らが共演して騙しあう物語が展開される。満州事変から日中戦争にいたる過程は非常に複雑で、各国の友好関係もコロコロ変わっている。1941年の2ヶ月少しの期間に時間を限定したので、少し物語に深みがないように思った。でも、女性の方が生き残ることに関して貪欲であると感じた。

映画前半、アンソニー・ランティン(チョウ・ユンファ)は中国裏社会のボスで、妻アンナ(コン・リー)が抵抗勢力と関わりがありそうに紹介される。タナカ大佐(渡辺謙)は日本の情報部のトップであるようだ。米軍のリチャード・アスター大佐(デヴィッド・モース)が情報部の責任者で、ポール・ソームズ(ジョン・キューザック)がコナー(ジェフリー・ディーン・モーガン)の代わりにやってくる。登場人物が人を使う立場の人間のうちは重厚感があるけど、本人達が現場に出るようになるとなんだかおかしくなっていく。でも、こういうシーンが実際にあったのだと思う。

というのも、旧日本軍は陸軍が中国大陸侵略を主導して、海軍は太平洋方面の担当だった。そして、陸軍と海軍を両方指揮下におけるような情報部というのは、開戦直前には力をなくしていたからだ。陸軍は陸軍で諜報組織を持ち、海軍は海軍で独自の組織を持つようになる。それがなぜわかるかというと、太平洋戦争開戦の一つの理由として陸軍と海軍の主導権争いがあったことが最近の研究でわかってきたのだ。また、中国側にも日本軍に協力した人間を裏切り者扱いすることが、徐々に起き始める。

中国側にも蒋介石が率いる国民堂側と、共産党側に味方するものが出てくる。真珠湾攻撃が起きるまでは、日本と中国は建前上交戦状態ではない。それは建前上であって、色々な勢力が入り乱れていたはずだ。それを、ボス自らが銃撃戦を起こすようなことがあるのは、たいしたボスではない証明になってしまう。チョウ・ユンファ演じるボスを上回るボスが存在していたはずで、その片鱗でも描かれているとよかったのだと思う。

コナーという友人の仇をとるために、ポール・ソームズがアンナを助けてまで危ない橋を渡るのかという疑問も浮かんでくる。ただ、キタ(ベネディクト・ウォン)という日本側の組織の人間がいっしょに逃げた自分の彼女に裏切られて、日本刀で斬首されるシーンがある。あれは日本人という立場でアメリカに通じていたということで、あり得る処罰の方法だと考える。

スミコ(菊地凜子)を愛人にしたタナカ大佐は、それほど上の立場ではないように思う。ポールとアンナが夫婦と偽って船に乗って出国するのを止められなかったのは、主導権が陸軍上層部に移っていたことも関係していると考えている。主役級の俳優を使っているので、もうちょっと頑張って欲しかった。



同じカテゴリー(2011年映画)の記事
トロン:レガシー
トロン:レガシー(2018-10-16 14:01)

リアル・スティール
リアル・スティール(2011-12-12 00:13)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
シャンハイ    SHANGHAI
    コメント(0)