ガール

奥田英朗原作の同名短編小説を、香里奈・麻生久美子・吉瀬美智子・板谷由夏共演で映画化された作品だ。働く20代終わりから30代の女性たちのそれぞれの悩みを現実的な表現で描いている。それぞれの女性のキャラクターを区別することで、観客も感情移入できる。原作では別々の短編だったのものを親友として一つの物語にまとめたアイディアは、秀逸だ。仕事で出世した女性、保守的な女性仕事相手に悩む、年下の男性に恋する、シングルマザーで仕事と育児を両立する、この四つの人物像をそれぞれの女優が演じ分けている。共感できる物語になっていて驚いた。

広告代理店に勤める独身29歳の由紀子(香里奈)はキャピキャピの洋服を着こなしている。自分ではまだいけているつもりだけど、親友からは「痛い」と忠告される。大手百貨店のクライアントで安西博子(加藤ローザ)が堅物で、斬新なアイディアをことごとく却下される。大学の同級生蒼太(向井理)とのデートは、学生時代に通っていた食堂だけだ。

不動産会社の管理職で既婚34歳の聖子(麻生久美子)は、自分よりも稼ぎの少ない夫博樹(上地雄輔)と暮らしている。年下の部下今井(要潤)は対立する派閥に属しており、女性の部下北村裕子(波瑠)といっしょに仕事をさせることにする。ある程度自由にやらせてみると、今井は裕子をアシスタントとして使い女性を軽く見る傾向が強かった。

老舗文具メーカーに勤める34歳独身の容子(吉瀬美智子)は、新入社員の和田(林遣都)の教育係になる。一回り以上歳が離れている男性に恋心を抱いて妄想がふくらんでいくが、イケメンなので女性社員同士の鞘当てが激しい。また、自動車メーカーの営業所に勤めるシングルマザーで36歳の孝子(板谷由夏)は息子の父親役も勤めようとして無理をしている。

誰のエピソードもおもしろくて共感できた。息子の逆上がりを教えるために自分も逆上がりに挑戦した孝子は、キャッチボールまで相手をしようとする。子供のときにソフトボールでもやっていたならともかく、未経験ではボールをうまく投げれない。男性社員にコーチしてもらう根性はすごい。暗くなっても息子と相手をして、かえって引かれてしまう。一回り年下の新入社員に妄想する容子が、彼のいるホテルに足を血だらけにして駆けつける。笑ってしまうほどの必死さが伝わってきた。

不動産会社の聖子は、最後の打ち合わせで一発逆転で男性部下のプランをひっくり返す。そして、50円玉の表裏を当てて負けた者が離職する賭けを仕掛けて度胸を示す。男性たちに頭を下げさせることに成功する。また、百貨店の堅物社員安西を口説き落とした由紀子はお客をモデルにしたファッションショーを行う。鑑賞後の爽快感は、すばらしい。お勧めの映画になった。



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