脳男

首藤瓜於原作の同名小説を生田斗真主演で映画化した。脳男とは感情や欲望を持たない人間で、本来なら生存不可能だと思う。少なくとも食欲や排泄の生理作用だけは生存の条件になる。それさえも訓練で身につけたとなると、SFの世界になる。この映画はSFサスペンスアクションで、内容もハードで本格的だ。バスやビルの爆破に、本格的な格闘技もいい。日本映画でこれだけのシリアスなアクションを作ったのは見事なのだ。生田斗真と二階堂ふみのやばい演技を劇場で見て欲しい。

都内で連続爆弾事件が発生する。警察病院の精神科医鷺谷真梨子(松雪泰子)は、バス停でバスに乗り遅れて命拾いする。真梨子が乗るはずだったバスが爆破されて、子供達も犠牲になる。爆弾を首に巻きつけられたタロット占い師がバスに乗り込んだところを、犯人が爆破させた。謎の犯人の手がかりは導線を切った特別な工具だった。茶屋刑事(江口洋介)と広野(大和田俊介)がその工具の持ち主を探していると、古い工場跡に行き着く。そこにいた鈴木一郎(生田斗真)を逮捕するが、黙秘してしゃべろうとしない。さらに、踏み込む直前に起きた爆破の破片が背中に刺さっていたのに痛みを訴えない。

鈴木一郎は痛みを感じない特別な身体を持っていて、感情もなかった。不気味な存在である彼を調べるために、精神科医の真梨子のところで鈴木は送られる。質問に答えるときは、形式的だ。嘘発見器にかけても、反応は機械的で感情的にならない。ここまでくると、何かゴルゴ13みたいだ。ゴルゴの場合は訓練で特殊能力を獲得したけど、鈴木一郎(入陶大威)の場合は生まれついた特徴をそのままにして殺し屋としての能力を身につけた。両親を交通事故で亡くした一郎は、大金持ちの祖父によって生活能力を訓練された。さらに、並外れたIQを活かしてあらゆる知識と運動能力を訓練された。

そして、悪人を処分する機械としての訓練も受ける。真犯人で主犯の緑川紀尚(二階堂ふみ)は、マスコミで明らかになった鈴木と担当医の真梨子を標的にする。水沢ゆりあ(太田莉菜)を従えて、護送される鈴木たちを襲撃する。警察も彼女たちの存在を初めて認知して、戦うことになる。でも、緑川も並外れたIQの持ち主で、高校2年生でアメリカの大学に入学した。病院のスタッフに変装して侵入し、真梨子のかばんに盗聴装置を取り付ける。警察よりも一枚も二枚も上手なのだ。

警察の特殊部隊も爆発物処理班も役に立たないほど、緑川と水沢はフットワークが軽くて残虐だ。狂気の緑川に対抗するには、鈴木一郎のような特別な存在でないと無理だろう。ラストの30分の病院の戦いは、ハリウッド大作なみの迫力を見せてくれる。緑川を演じる二階堂ふみは、渾身の凄みを見せている。生田斗真は全く瞬きをしていないという。目の色が本当に変わっているような演技は、鬼気迫るものだ。キング・クリムゾンのエンディング曲が様になっていた。

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