サイド・エフェクト

スティーヴン・ソダーバーグ監督が、抗うつ剤の副作用を題材にして作ったサスペンス・ミステリーだ。ニューヨークの大学の教授が監修をしているので、医学的な描写は確かなのだと思う。自分が長年服用しているのと同じ分野の薬が題材になっているので、非常に興味深く見た。ルーニー・マーラの演技が真に迫っているので、どんどん引き込まれてしまった。実際に入院した経験のある患者の立場からすると、ラストのオチは納得のものだった。

インサイダー取引の罪で実刑判決を受けた夫マーティン(チャニング・テイタム)を、妻エミリー・テイラー(ルーニー・マーラ)と夫の母(アン・ダウト)が迎えに来る。三人は仲良く帰宅するけど、エミリーは心を病んでいた。それは、マーティンが株のディーラーとしてばりばり働いているころから兆しがあったことだ。大勢の集まるパーティーではパニックになり、夫に抱えられて帰ることもあった。羽振りがよかった夫が突然インサイダー取引の罪で逮捕されたことも、病気の引き金になっていた。

当初はヴィクトリア・シーバート博士(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)が主治医だったけど、自殺未遂を起こして運ばれたのがジョナサン・バンクス博士(ジュード・ロウ)のところだ。自分の車で駐車場の壁にブレーキもかけないで衝突するのは、相当の覚悟がいる。普通なら入院させるのが普通だけど、本人の同意なしではできない。1週間以内の通院を条件にバンクス先生は、エミリーを退院させる。ところが、処方した薬で夢遊病の症状が出てしまう。

この処方した薬をめぐって、製薬会社と医師の癒着ともとれるやり取りが描かれる。新薬であれば、患者の状況報告を条件にある程度の報酬が発生するのかもしれない。その薬は性欲を抑制しないで、夫婦関係が良好だとエミリーは続けたいと主張する。このあたりのさじ加減は非常に難しい判断が必要になる。ところが、エミリーは意識がない夢遊病状態のときに夫を刺殺してしまう。このシーンが全く殺意を感じさせないので、恐ろしい。すぐにエミリーは監視付きの病院に入れられてしまう。しかも裁判では、責任能力が問えない状況になっていく。

すると、誰に責任があるのかという問題が発生し、処方したバンクス先生が窮地に立たされる。うつ病の自分から見ると、エミリーの目の付け所が少し違うのがわかった。自殺しようするのに、駐車場係や駅員の名札を見たりしない。その目の付け所は違う病気を予感させる。ましてや専門家が詐病のアドバイスをしたら、簡単に見破るのは難しい。

うつ病患者はあんなにパワフルに行動できない。そして、薬の処方もいきなり新薬を採用することもないし患者と医師があんなに密に接することもない。ただ演出がうまいのか演技がうまいのか、ジュード・ロウが精神的に追い詰められて患者みたいに見えてしまう。実によく出来ている。
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