許されざる者(渡辺謙)

1992年のクリント・イーストウッド監督・主演の名作を、李相日監督が渡辺謙を主演にむかえて北海道を舞台に映画化した。シリアスで小難しい内容かと思ったら、じっくりと大人の鑑賞に耐えうる秀作になっていた。あらすじはほとんど西部劇版と同じなのだけど、日本の明治維新をはさんだ時代設定にしたので独特の風味が加わった。ロケーションがすばらしいので、日本の自然を見直すこともできた。本年度の映画賞の一角に入るのは確実だ。

旧幕府軍は函館まで戦いの場を移して、壊滅している。新政府軍はいつまでも治安を乱す輩を許しておけない。また、屯田兵によるアイヌ民族の迫害も相当あったと認識している。主人公の釜田十兵衛(渡辺謙)は想像するに、京都で人斬りをしたのだろう。新選組の中には新政府軍に対抗するためだけに生涯を捧げた人がいたかもしれない。北海道の大雪山の麓で、暮らしていてもおかしくない。

1880年、妻に先立たれて子供二人と暮らしている十兵衛のところに、幕府軍の戦友だった馬場金吾(柄本明)が訪ねてくる。女郎が顔を切り刻まれて瀕死の重傷を負ったために、千円の賞金が犯人にかけられる。その仕事に十兵衛を誘うのが目的だった。その日の暮らしにも困る状態だったので、十兵衛は子供二人をアイヌの里に預けて旅に出る。その途中で、アイヌと和人の混血である沢田五郎(柳楽優弥)が仲間に入る。5人を殺したと大口を叩くけど、目に凄みがない。

顔を切られた女郎なつめ(芹那汐里)は商売ができなくなり、お梶(小池栄子)たちが復讐のために千円の懸賞金をかける。ところが、彼女たちが暮らす町は非常にこじんまりとしていて、町長と警察署長をかねる大石一蔵(佐藤浩市)が権力者として君臨していた。町の入口には武器の持ち込み禁止と立て看板がある。それを無視してやってきた長州出身の北大路(國村隼)は殴り続けられて、投獄されて殺される。その行為は女郎たちへの警告でもあり、やってくる十兵衛たちの経験する予告編にもなっている。

妻との約束で刀を封印したのに、再び立ち向かうには相当のきっかけが必要だった。馬場金吾が仲間を抜けたのに、北大路たちに捕まって殺されて女郎屋の門に縛られていた。それを見た十兵衛は、正面の入口からゆっくりと入っていく。あまりも突然で中で酒を飲んでいた追跡隊は度肝を抜かれる。このシーンの渡辺謙は鬼のごとき表情をしている。いきなり大石切り捨てて、鉄砲や刀でかかってくる人間を次々に倒していく。深手を負いながら、歩いて去っていくのが信じられない。

若い二人沢田となつめには賞金を渡し、子供達の面倒を頼む。その二人が子供達と合流するシーンがあってよかった。
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