そして父になる

是枝裕和監督・脚本で、赤ちゃんを産んだ病院で取り間違えられた二組の夫婦の物語を映画化した。出演は福山雅治と尾野真千子、リリー・フランキーと真木よう子だ。一組は大手建設会社に勤めるエリート社員で、一組は群馬県で小さな電器店を営んでいる一家だ。カンヌ国際映画祭で審査委員賞を受賞したので小難しい内容かと思ったら、子供達の自然なふるまいでとても親近感を抱く内容だった。本当にいい映画を見たというのが、周囲の観客の一致した意見だった。

一昔前ならいざ知らず、現在なら赤ちゃんの取り違えは有り得ない。でも、看護師のストレスから来るあてつけなら充分にありえるのだ。野々宮良多(福山雅治)は東京に本社がある大手建設会社のエリート社員で、大きなプロジェクトを次々に成功させてきた。都心の高層マンションに住み、長男慶多にはピアノを習わせて進学塾に通わせ有名私立小学校へ入学する。夫の言いなりの妻みどり(尾野真千子)は、病院からの取り間違えの連絡に自分を責める。

もう片方の家族は、群馬の田舎で電器店を営む斉木雄太(リリー・フランキー)は冴えない男だけど子煩悩であり、妻のゆかり(真木よう子)は3人の子供を産んで肝っ玉母さんだ。最初に野々宮家の様子から描かれるのが、この映画のみそなのだ。いわゆる勝ち組と言われる家族であり、父親は息子に自分のように生きるのを期待している。私立小学校に入った息子に安心するが、のんびりした性格に違和感を持っている。

野々宮は子供の取り違えがわかり、群馬の斉木家を訪問する。庶民的な環境で生き生きとした目をした子供達が少し羨ましくも、軽蔑する心情も抱く。自分たちは斉木家とは違うと思いながら、お互いの息子の交換生活が始まると親のエゴが浮き彫りになっていく。かなり無理をしている様子は、ピアノの発表会で慶多が弾く曲でもわかる。野々宮は自分の血がつながった子供と生活して、育った環境で変わってしまうことを知る。そして、育てた息子が自分のことを写真に撮っていたことに感動する。

人間として子供を扱っていたか、自分の理想を実現させるために子供を育てていたかで親としての資質も違ってくる。親も子供を育てることで人間的に成長するのだ。本当にいい内容の作品になっている。演技面では、子供達の自然な表情を引き出した監督の手腕が際立っている。リリー・フランキー、真木よう子、尾野真千子の挙動は自然な感じで違和感がない。福山雅治はとても難しい演技に挑戦したので、文句は言わない。

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