ゲノムハザード ある天才科学者の5日間

司城志郎の小説を韓国のキム・ソンス監督が映画化した日韓合作のサスペンスだ。科学的な描写には稚拙な部分が多いけど、サスペンスとしてはかなりの力作に仕上がっている。脚本も監督が担当したので、邦画にはない乾いた風味が効いている。96時間という限定された期限で物語が展開するので、西島秀俊とキム・ヒョジョンが良い芝居としていて退屈しない。でも、ウィルスの培養液を平板シャーレに保存するとか記憶情報がDNAの配列情報でコピーできるなどの疑問点が頭に残ってしまった。薬品会社を関与させているのでもう少し取材が必要だと思った。

イラストレーターの石神武人(西島秀俊)はある日帰宅したら愛する妻が冷たくなっていて、仰天する。そこに電話がかかってきて出ると、目の前で冷たくなっている妻からのものだった。訳の分からない石神は警察を騙る謎の集団に襲撃される。窓から逃げ出すと、偶然通りかかった韓国人記者のカン・ジウォン(キム・ヒョジン)に助けられる。最初は迷惑だったのだが、石神の真剣な話しぶりに興味を持って手助けをする。

石神というイラストレーターは確かに存在しているが、顔つきが全く違っていた。カンは調査した結果を彼に告げるけど、なかなか信じようとしない。妻のユリ(中村ゆり)と共通の親友である伊吹克彦(浜田学)に事情を聞きに行くけど、はっきりした答えが得られない。そのうちに、石神は左手で文字や絵をかいていたのに、右手を使うように変化していた。まるで人格が変わったような変貌ぶりで、観客の疑問を呼ぶ。

怪しい製薬会社の博士佐藤英輔(伊武雅刀)や韓国の産業スパイの親分などが出てきて、雰囲気が怪しくなっていく。記憶や利き手や特技などのその人間だけが持つ遺伝子情報を、ウィルスによってコピーさせるというアイディアはよく思いついた。でも、記憶は神経細胞の物質の伝達やニューロンの間で流される微弱な電気信号で形成されると説明がある。また、記憶を司っているのは脳の最深部にある海馬に蓄積されているという研究成果もある。

仮に違う人間の記憶や特技や性格などをウィルスの伝達だけでコピーできるとしても、なぜ時間によって限界ができるのだろう。主人公の記憶や特技や性格などの情報はヒトゲノムと言われている。ヒトゲノムの塩基数は約30億個だけど、ウィルスのゲノムは最大でも24万個だ。遺伝情報を担っているエクソンという遺伝子はゲノムの中の1割しかない。3億個に対して2万個の塩基配列では違いすぎる。じゃあ、DNA鑑定で識別しているのはどうなのかと聞かれるだろうけど、13~15箇所の部分を総合して判断している。

二重人格という設定では意味のない登場人物が多くなってしまうので、物語が成り立たない。ウィルスはRNAしか持っていないのが通例だけど、人間はRNAとDNAの二種類の塩基配列を持っている。
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