アメリカン・スナイパー

アメリカン・スナイパーイラク戦争で米軍史上最大の活躍をした狙撃手を主人公に、巨匠クリント・イーストウッドが映画化した作品だ。2003年の開戦後4回も従軍したクリス・カイルをブラッドリー・クーパーが演じ、彼といっしょに従軍したケヴィン・レイスが本人役で登場している。

ネイビーシールズが実際に使っている狙撃銃MK11が映画でも使われている。だから戦闘シーンはまるでドキュメンタリーのような臨場感があり、本国に戻ったときの苦悩はプロの演技によってリアルになっている。さらに、クリス本人が元兵士に殺害されたあとの葬列の映像は一部実際のものが使われているのだと思う。

クリス・カイル基金という退役軍人を支援する基金が設置されており、この映画の製作にも協力している。イラク戦争の大目標だった大量破壊兵器は存在しなかったし、あの戦争そのものの意義も疑問視されている。でも、戦争の悲惨さはこの映画の通りなのだと思う。クリス・カイルが長男に鹿の狩猟を教えるシーンが映画の冒頭と最後に出てくる。本来の銃の使い方は、これだと思った。

2001年の同時多発テロをテレビで見たクリス・カイルは祖国のために戦いたいと、軍隊に入る。体力もあって30歳という人生経験もあったので、ネイビーシールズの狙撃手として訓練を受ける。それはそれは過酷な訓練だ。そのおかげで、クリスはゴルゴ13並の狙撃の腕を身につける。イラクに派遣されると、仲間の兵士を守る役目を果たす。相手が女性や子供でも武器を手にしたら、容赦なく狙撃する。ギリギリまで武器をもたないでくれと願いながら、スコープを見ている。その優しさがあるので、本国に戻ると妻タヤ(シエナ・ミラー)の夫であり子どもたちのよき父親として振る舞おうとする。

でも、だんだんと精神のバランスがおかしくなっていく。家族とうまく交流ができない。普通の家庭生活が営めないのだ。4回目の派遣で、敵のシリア人狙撃手ムスタファ(サミー・シーク)との対決シーンは砂嵐がやってきており、壮絶だ。敵に囲まれてしまう恐怖は想像を絶する。帰国してから、なかなか家族のところに戻れない。精神のバランスを取るために、退役軍人との交流をする。その交流シーンが実に丁寧に描かれているのがすばらしい。彼が退役軍人の一人に殺されてしまうのは、つい最近のことらしい。その犯人が無期懲役になったとニュースが流れた。これこそが、戦争の醜さなのだ。星5個。

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