ソロモンの偽証 後篇・裁判

宮部みゆき原作の同名小説を成島出監督が映画化した後篇だ。中学生が学校の屋上から落ちて亡くなった事件を巡って、生徒だけで開く裁判の進行具合を描いている。2年A組のクラス委員藤野涼子が立ち上がり裁判をすることになって、事件の関係者すべてが学校の体育館に集まる。判事、陪審員、被告、弁護人、検察、傍聴人が5日間の裁判期間中をいっしょにすごす。大人のエゴがもっと事件に絡み合っているのかと思ったら、案外結末はあっさりしていた。大人の問題ではなく反抗期の中学生の難しさが問題だったのだ。エンディングで、主題歌の「With or without you」が流れてあまりにも映画の内容に合致しているので驚いた。

被告で問題児の大出俊次(清水尋也)が、屋上から柏木卓也を突き落とした疑惑で裁判が始まる。大出のいじめの実情がどんどん明らかになっていく。ますます、疑惑が高まるのだけどアリバイが成立しない。検事役の藤野涼子も、弁護役の神原和彦(板垣瑞生)も証人を探しまわる。まず、告発状を出した三宅樹里(石井杏奈)は現場を見ておらず、大出を陥れるためだったことが判明する。

そして、大出の自宅に事件当夜に訪問していた人物が放火犯だったことがわかり、藤野の父で刑事の剛(佐々木蔵之介)の協力で弁護士が証言台に立つ。放火犯はもう逮捕されているので、担当の弁護士しか証言できないのだ。その証言によって、被告のアリバイが成立する。その時点で、それまで進行してきた裁判が成立しなくなってしまう。この展開には全く驚いた。

携帯電話がない時代、街中には公衆電話があった。亡くなった柏木家には、電話の着信履歴で街中の公衆電話から誰かが電話したことがわかる。なんとその相手が誰かわからないまま、被告のアリバイが成立してしまった。柏木は大出たちが樹里たちをいじめているのを見ていたけど、何もしない藤野を責めたりする人間でかなり厭世的だ。傍観者とも言える。唯一の友人だった神原はほかの中学に入学してしまい、友人がいなかったのだ。本当は藤野たちに反撃して欲しかったのだろう。

でも、誰も自分に関わってきてくれない。それは自分から関わりを持とうとシない限り、得られない関係なのだ。そんなことは中学生にわかるわけもない。反抗期の最中に誰も助けてくれないし、誰もいじめを止めようともしない。それが、柏木の感じた孤独感なのだったと思う。U2の主題歌を聞いていて、すぐに気がついたのだ。伝説の裁判以来、母校ではいじめも自殺も起きていないと校長(乾貴美子)が語る。without扱いしない校風が出来上がったのだろう。星3個。

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