脳内ポイズンベリー

水城せとな原作の同名漫画を、「ストロベリーナイト」の佐藤祐市監督が映画化した。物事をはっきりと決められないアラサー女子を真木よう子が演じて、彼女の脳内で理性やポジティブ、ネガティブなどが会議をして右往左往する様子を描いたラブ・コメディだ。もっと手軽に見られると思っていたら、案外中身のある展開だった。自分のことを好きになれない人間が他人を好きになれるわけがないとは、まさに本質をついた言葉だった。自分のことを振り返ると、なかなかの奥深さを感じた。でもまだ30歳になったばかりの女性なら、結論を急ぐこともない。

ケータイ小説の作家である三十路前の櫻井いちこ(真木よう子)は、飲み会で少し話しただけの7歳年下のイケメン男子・早乙女(古川雄輝)に駅で出会う。声を掛けるかどうかを巡って、脳内会議が始まる。理性で議長の西島秀俊、ネガティブの吉田羊、衝動の桜田ひより、ポジティブの神木隆之介、記憶の浅野和之の5名が喧々諤々の言い合いを始める。その間、いちこは口をポカンとしたままで動かない。他の作品の真木よう子は竹を割ったような女性を演じることが多かったけど、今回は全く逆の性格だ。

そして、一夜を共にしてしまうのだけど、30歳の誕生日を迎えたあとに話をしたら、衝撃的な答えが帰ってきた。「ごめん、それはないわ。」と早乙女に言われて、「ごめん、30歳だったの。ちょっとボクの守備範囲ではないわ。」という意味に取ってしまう。それでも、なんとか付き合うことに落ち着く。ところが、出版社の担当の越智さん(成河)と鎌倉まで取材で車で同行して、偶然キスをしたのが早乙女にバレてしまい問題になる。

そんな物語の序盤では、お気楽なラブ・コメディだと思っていた。そしたら、だんだん趣が違ってくるのだ。いちこの小説が評価されて、単行本として出版されることになる。本屋の店頭に本が並び、マスコミにも取り上げられて時の人になった。でも、いちこはそんな自分のことを好きになれないのだ。これは、完全に自己否定の考えだ。せっかく成功したのに、喜ばないのはおかしい。自分が小説を書き上げても達成感を感じないのと同じみたいだ。

よくそんな人間が小説を書けるものだと関心するけど、ケータイ小説だから深い人間観察力は必要ないのだろうか。自分のことを考えてみると、脳内会議を派手にやったことがない。理性や感情、ネガティブとポジティブが大喧嘩をしたことがない。最初に受けた印象をそのまま心の奥まで受け入れてしまい、あとでどうすればいいか悩むタイプなのだ。だからうつ病になってしまったのだけど、興味深い映画だった。

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付け足し、冒頭の真木よう子のサービスショットを見逃すな。ラストにも少しあるよ。女王様はやっぱり真木よう子なのか。



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