ラン・オールナイト

「フライト・ゲーム」のジャウマ・コレット=セラ監督が、リーアム・ニーソンとタッグを組んで作られたクライム・アクションだ。組織の始末屋として30年間働いてきた男が最愛の一人息子を命がけで守るために、忠誠を誓ってきたボスに反旗を翻す。いままでのスーパーヒーローぶりから比べると、ニューヨーク中を敵にまわして逃げまわる情けない父親に成り下がっている。その必死な表情は余裕もないし、息子家族のために命を捨てる覚悟をしている。襲ってくる相手も凄腕の殺し屋だ。リアルな描き方がハードな作品を完成度の高いものにした。

ニューヨークのブルックリンは下町だ。そこを縄張りにするボス・ショーン(エド・ハリス)と、組織おかかえの殺し屋ジミー(リーアム・ニーソン)は30年来の親友だ。ジミーの息子マイク(ジョエル・キナマン)は父の仕事を嫌っており、別々に住んでいる。母親の死のときだけ戻ってくるような、家族と関わりをもたない父親だ。一方ボス・ショーンの息子ダニー(ボイド・ホルブルック)は昔気質の父のやり方を嫌っており、外国人を連れてきて麻薬の取引をしたいと持ちかける。

でも父から無下もなく断られたダニーは、外国人から紹介料として収めた金を返すように言われる。その外国人をダニーのところに運んだのがリムジンの運転手のマイクだった。何もなければ無事に仕事を済ませて帰れるはずだった。ところが、外国人とダニーたちが撃ちあいになってしまい、ダニーがリムジンに乗っていた二人を始末してしまう。その目撃者のマイクが、目撃者として命を狙われる。父ジミーはすぐに息子の家族を守るために駆けつける。

ちょうどダニーが息子のマイクに拳銃を向けた瞬間だったので、ジミーはダニーを射殺する。ジミーは正直にボスのショーンに電話をして、仕方なく息子を殺してしまったと打ち明ける。しかも、一人でショーンに会いに行き事情を説明するけど、ショーンは「お前もマイクも両方殺す:と宣言する。マイクの妻ガブリエル(ジェネシス・ロドリゲス)には妊娠中の子どもと二人の子供がいる。家族を田舎の別荘に移し、父と息子はマフィアと買収された警察と凄腕の殺し屋に追われる。

警察の中にも買収されていないハーディング刑事(ヴィンセント・ドノフリオ)がいるけど、いかんせん少数派だ。今までに殺してきた相手が夢にまで出てきて苦しんでいるジミーは、すべての苦しみから解放されたかったのに違いない。家族に危害が及ばないように距離を取って、疎遠にした。でも、本当は孫を抱きしめたい。この苦悩から解放されるラストの撃ちあいにカタルシスを感じた。わざとスローモーションを取り入れたので、登場人物の心情がビシビシと伝わってきた。なかなかの秀作だった。星4個。

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