劇場霊

中田秀夫監督が、AKB48の島崎遥香を主演にして作られたホラーだ。永遠の若さを追い求めた女貴族の舞台劇を作ろうとする過程で、曰くがある球体人形を使ったことで起きる惨劇を描いている。映画の本筋で展開されるホラーはそれほど怖くないのだが、エンディングで惨劇から1年後の主人公の姿が一番怖かった。頼りなさそうな女優だったぱるるが、あんな乗り移ったような目つきができるとはびっくりだった。

芸能事務所に所属して5年になる水樹沙羅(島崎遥香:ぱるる)は、死体の役くらいしか回ってこないで目が出ない女優だ。事務所に掛けあって、舞台劇「鮮血の呼び声」のオーディションを受けると、端役として採用される。主役は篠原葵(高田里穂)だが、セリフが全部入っている沙羅を毛嫌いする。小道具として使われている球体人形にもセリフがあるけど、内容が不気味なのだ。篠原が錯乱状態になって転落事故にあい、重体になる。

代役として沙羅が採用されるけど、彼女も人形の目が動いたと動揺して主役を降りてしまう。その主役は、女貴族のエリザベートという実在した女性だ。村の若い女性を捕まえてきて、生き血をすすり血の風呂に入り永遠の若さを保ったという役柄だ。人形が夜に動き出して、スタッフが最初の犠牲者になる。死体はまるでミイラのように生気を吸い取られていた。

人形の身体は小道具の和泉浩司(町田啓太)が作ったものだけど、頭だけは20年前に人形作家が土砂崩れにあって死んだ娘に似せて作り上げていた。その20年前に、その人形のせいで作家の娘二人が死んでいた。人形はずっと生きたいという人間の怨念が乗り移っていたのだ。ということで、演出家の錦野(小市慢太郎)が演劇の出来栄えを追求すればするほど、犠牲者が増えるという仕組みになっている。

沙羅と和泉が強力して、その球体人形を破壊して事件が解決する。「欲しい、欲しいばかり言ってんじゃねえ」と叫んで沙羅が人形の顔を破壊して惨劇が終わるのだ。関係者全員が死亡して、犯人不明のままになってしまう。その一年後、沙羅は悲劇を克服して売れっ子女優になっていた。川岸で、映画の撮影をしている沙羅が本番に臨む。沙羅の目が、愛を打ち明ける相手のすべてを吸い取るような凄みを持っていた。

もし、下手な女優のセリフ回しも演技で最後の凄みのある目つきも出来たのなら、ぱるる(島崎遥香)恐るべしなのだ。秋元康の名前があったけど、公式サイトにはないのはどうしてだろう。星2個かな。

トラックバック URL
http://torachangorogoro.blog.fc2.com/tb.php/280-71996f2f



同じカテゴリー(2015年映画)の記事
母と暮らせば
母と暮らせば(2015-12-16 22:59)

海難1890
海難1890(2015-12-12 21:25)

この記事へのコメント
初めまして。

外国の史劇であるエリザベートを演じながら、その恐怖が現実になって行く、独特の展開は面白かったですね。

人形が受肉していく様も、あのまま進めばどうなっていた事か…。沙羅が危険を知らせながら、監督がおごり高ぶって劇を進めたのが、あの結果ですから。観えざる者への油断は、悲劇の要因ですね。
Posted by 隆 at 2015年12月03日 16:29
隆さん、はじめまして。コメントありがとうございます。

あの人形の怨念はなかなかの恐怖でしたね。

映画の感想でコメントをもらうのは久しぶりので、ほんとうにうれしいです。

また、気軽にコメントしてくだいね。
Posted by とらちゃんとらちゃん at 2015年12月03日 19:36
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
劇場霊
    コメント(2)