アイアムアヒーロー

花沢健吾の同名漫画を、「GANTZ」や「図書館戦争」の佐藤信介監督が映画化した作品だ。感染パニック映画なのだけど、ミラの例のシリーズとは違い日本的な情景の中でどうなるかを描いている。大泉洋扮する漫画家アシスタントが唯一の特技である猟銃を使って、サバイバルに立ち向かう。当たり前の日常からパニックに導入する過程が丁寧に描かれている。ショッピングモールを使った後半もなかなかの迫力だった。でも、これはお話が終わりではなくヒットしたら続編がありそうだ。

鈴木英雄(大泉洋)が恋人てっこ(片瀬那奈)の部屋に住まわせてもらい、10年以上経過しているところから始まる。もう35歳だよと恋人に詰め寄られても結論を出せない優柔不断な男は、簡単に変われるものではない。いくら猟銃を持っていても、撃ったことがあるのはクレー射撃だ。ゾンビが出てきても簡単に対抗できない。そのやわな男が高速道路での戦いを経験してもたくましくならない。

富士山の近くにあるショッピングモールで、ZQN(ゾキュン)の襲撃を受けてもまだ撃てないのだから弱々しい。弱々しいと書いたけど、これがクレー射撃出身者の現実だろう。ここらへんまでは、物語について来れる。住宅街のシーンは浜松市の住宅街でロケをしたそうで、現実的だった。空には軍用機が飛び交っており、さぞ大々的な物語になると思った。でも、ショッピングモールに舞台が移ると、なんだかその場所しか感染が広がっていない錯覚に陥ってしまう。

リーダーの伊浦(吉沢悠)や藪(長澤まさみ)、アベサン(徳井優)が存在感を持っているけど、だんだんとお笑いみたいな雰囲気も出てくる。人間だった頃の口癖や打ち込んでいたスポーツや趣味、仕事をゾンビたちが繰り返している様子は、皮肉めいた描写だ。特に陸上の走り高跳びの選手だった強敵が、筋肉バカみたいで漫画らしい。

せっかく風呂敷を広げたのに、それを少しも回収しないので物語の幅が狭くなってしまった。風間トオルが演じた役人はどこと連絡を取り合っていたのだろう。有村架純の早狩はなぜ赤ん坊に噛まれたのに、脈があり驚異的な身体能力を持っているだろう。屋上で暮らしていた生き残り同士が内輪もめしているけど、そのやり取りも緊迫感に欠けた。ショッピングモールを抜けだして向かう先はあるのか。星2個未満。

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