三度目の殺人

「そして父になる」の是枝裕和監督が、再び福山雅治を主演にして作った法廷ミステリー・サスペンスだ。成果重視の弁護士が供述をコロコロ変える容疑者に翻弄される物語だ。これはズシンと心に響く重い物語だ。せっかく死刑になるのを回避しようとする弁護士を手球に取るような殺人犯の真意が全くわからない。徐々に出てくる証言は裁判のやり直しも辞さないとんでもないものだ。何が真実で誰が誰を裁くのか、わけがわからなくなっていく。官僚的な裁判制度の弊害も浮き彫りにして、明らかになるのは容疑者の思いもつかない決意だった。

これは見た後にどっと疲れる映画だった。観客は最後まで結末がわからない。終わってじっくりと考えないとどういう内容だったのか、わからないのだ。解釈の仕方でつまらない映画だと思う人もいるかもしれない。何しろ冒頭で三隅(役所広司)が誰かを棒状のもので殴り殺しているみたいだ。彼一人でやったような印象を我々は持ってしまう。次には、もう三隅は拘置所におり、弁護士の重盛(福山雅治)と面会している。

三隅は10年前に殺人の前科があるので、特別の事情がない限り死刑になる。それを弁護士たちは無期懲役に減刑しようという方針を持つ。そこで、重盛は三隅を何回も面会するけどそのたびに言うことが変わるのだ。まるで外で起こっていることがわかるように、コロコロと証言を変える。ここまでだと、死刑になるのを恐れて怯えているのかと思いそうになる。

ところが、三隅が被害者の娘山中咲江(広瀬すず)と交流があったことや、山中の食品工場が原料の産地偽装をしていたらしいことがわかってくる。三隅は出所後山中の会社に雇われて、世話になっているはずだった。それなのに、山中を殺すのは相当の理由が必要なのだ。検察では三隅の自供をもとに死刑の求刑をする。何か無理矢理やっている感じがある。

食品偽装がバレたらその会社は潰れてしまうだろう。そして、娘が父親に乱暴されていたと言い出す。でも、裁判の求刑まで段階が来ており、最初からやり直すことは考えられなかった。裁判官も検察も弁護士も、一度乗ってしまったレールからは降りないのだ。これは、裁判制度の矛盾というか弱点なのだと思う。

三度目の殺人とは、三隅が一人で悪者になって自ら死刑宣告を受けるように持っていったという意味なのだ。それがわかるのは、映画を見終わって外の光に当たった段階だった。なんかとんでもない映画を見てしまったと思った。星4個。

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