今夜、ロマンス劇場で

モノクロ映画から飛び出したヒロインと映画監督を夢見る青年の切ない恋の物語をファンタジックな演出で描いた作品だ。綾瀬はるか主演を想定した脚本が素晴らしい。相手役の坂口健太郎も指名されての抜擢だという。往年の名作映画へのオマージュも散りばめられており、映画ファンにはたまらない設定だ。「あなたでなきゃ、だめなんです」という切ないセリフをどのように料理するのか、最後まで目が離せない感動作になっている。涙が止まらないシーンが多くて、爽快な気分になった。

「ニュー・シネマ・パラダイス」、「ローマの休日」、「オズの魔法使い」、日活のガイシリーズなどを思い出させてくれた。公式サイトにはほかの映画の名前もあるけど、わてはわからない。戦前に流行った白黒フィルムの映画は、戦後になると誰も振り向かない存在になってしまう。それを映画会社に勤める牧野健司(坂口健太郎)が、映写室の中から白黒フィルムの映画を取り出して鑑賞する。

すると、雷が落ちて映画の中からお姫様美雪(綾瀬はるか)が飛び出してくる。美雪はお姫様なので、牧野のことをしもべと呼び高飛車な態度を取る。牧野が勤めている映画会社の撮影所に連れていけといわれて、リヤカーに乗せていく。それが馬車のつもりというのが笑ってしまう。撮影所には、スターの北村一輝や同僚の中尾明憲、社長令嬢の成瀬塔子(本田翼)らがいた。

ガイシリーズの主役北村一輝の大げさな演技が面白い。また、本田翼演じる社長令嬢が牧野に恋心を抱く様相が切ない。牧野と美雪があまりにも親しげなのでヤキモチするのだ。社長令嬢が美雪に話をしに行くと逆に応援される。でも、牧野は美雪でないといけないと固く信じている。その思いはたとえ相手に触れなくてもいいという愛情なのだ。

現在の姿が加藤剛演じる病室の老人なのだろうか。それとも、若い時に映画の世界に入り込んで永遠に生きる道を選ぶのかとも思った。白黒フィルムでメジャーでない作品なので、廃棄処分になる宿命だった。それが、デジタル化されたら、映画の中で永遠に生きることができる。映画の中は窮屈で自由がないという美雪の言葉も意味深い。どちらを選ぶのかは、難しい問題だ。それと、映画が消費される風潮もどうなのでしょう。星4個。

トラックバック URL
http://torachangorogoro.blog.fc2.com/tb.php/396-b1e849c3


同じカテゴリー(2018年映画)の記事
アリー/スター誕生
アリー/スター誕生(2018-12-21 21:33)

来る
来る(2018-12-11 22:35)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
今夜、ロマンス劇場で
    コメント(0)