空飛ぶタイヤ

池井戸潤原作の同名小説を本木克英が映画化した作品だ。これはもう記憶に新しい某三角印の財閥系自動車会社のリコール隠しを題材にしているのがわかる。当時消費者はそんなことをする大企業があるのかと愕然としたものだ。パリダカール・ラリーで輝かしい成績を残してすごいなあと思っていた。でも、この映画を見るといかにひどい悪行が行われていたのかがわかる。それに対して、弱小運輸会社の若い社長が立ち向かう様子は溜飲を下げるものだった。今の世の中嘘を突き通せばなんとかなる風潮があるけど、それでは倫理的に認められないとわからせてくれた。

ある日、一台の大型トレーラーが脱輪事故を起こし、転がったタイヤが歩道を歩いていた母子を襲う。母親が即死して、子供は軽症で済んだ。トレーラーの製造元であるホープ自動車は事故原因を赤松運送の整備不良だと決めつける。赤松運送には家宅捜索が入り、社長の赤松徳郎(長瀬智也)は世間の冷たい目にさらされて、取引先も減り銀行も冷たく離れていく。銀行も同じ財閥系なので、態度が掌返しのように変わる。

ホープ自動車内部でも、お客様担当部署の沢田(ディーン・フジオカ)がしつこい赤松を邪険に扱う。もちろん、上層部は小さい運送会社のことなど全く無視する。何回も赤松は苦情を伝えるけど、沢田側は1億円の和解金を提示してくる。赤松はもう銀行の支援をなくなり、倒産の危機に陥っていた。でも、喉から手が出るほど欲しかった1億円を断るのだから大したもんだ。

週刊誌にリークしても、自動車会社の上層部が記事を握りつぶしてしまう。すごく強大な力を持った敵である。マスコミも自分の言いなりにしていますのだから恐れ入る。自動車会社の中でも、沢田を中心にした仲間が正義感を持った行動をする。でも、それを会社の仲間が妨害するのだから、怖い企業風土である。現実の事件では自動車会社の内部告発で運輸省や警察署が動いた。

でも、この物語では小さな運送会社の社長から若い整備担当者に至る面々が巨大企業に立ち向かう。副社長が警察署の取調室で証拠ないだとうとうそぶくけど、それを看過する証拠を突きつける場面が爽快だ。悪いやつはとことん悪く描いて、ホープ自動車内部の葛藤も色々ある。他の運送会社まで巻き込んで、警察の捜査方針まで変えてしまう。しっかりと解決した爽快感も見事だった。これは現代の水戸黄門映画です。オススメですよ。

トラックバック URL
http://torachangorogoro.blog.fc2.com/tb.php/413-3718c688


同じカテゴリー(2018年映画)の記事
アリー/スター誕生
アリー/スター誕生(2018-12-21 21:33)

来る
来る(2018-12-11 22:35)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

写真一覧をみる

削除
空飛ぶタイヤ
    コメント(0)