ハゲタカ
村上ファンドとライブドア事件の後、企業買収に関する規制が強化された。この映画は、NHKドラマの映画化で監督もドラマの演出をした大友啓史だ。発行済み株式の5%以上の株を買う場合には、大量保有報告書の提出が義務付けられている。そして、議決権を有する割合まで買う場合には公開買い付けをしないといけない。
この映画はで、アカマ自動車に公開買い付けを仕掛けてくる中国系ファンドが、1300円で公募する。それに対して、ホワイトナイトとして名乗りをあげた鷲津政彦(大森南朋)率いる鷲津ファンドが、少し高い株価で公開買い付けをする。両者が買い取り価格をどんどん引き上げていく様子が描かれているが、実際に買い取り価格を簡単に変更できないと思う。
また、わてが疑問に思っているのは、アカマ自動車の株式保有比率が、政党の支持率のごとく簡単に上下していることだ。公開買い付けは大口の株式保有者を確保するのはもちろん大事だが、個人株主を丹念に拾うことも欠かせない。仮にあのような大量の株の移動があれば、監督官庁がなんらかの規制をすると思う。
そんな突っ込みどころがあるこの映画だが、着眼点は非常にいい。中国は現在アメリカ国債の一番の保有者であるし、中東やアフリカでも宗教も肌の色も関係なく経済協力をしている。資源確保のためには、非常に貪欲で日本の企業は太刀打ちできない。また、アメリカがサブプライムローン問題以降、金融面で力を失っているのも映画以上に深刻になっている。
中国系ファンドの責任者・劉一華(玉山鉄二)は残留日本人孤児三世で、かつて鷲津がアメリカにいることの後輩だった。中国の政府系ファンドの後ろ盾を持つ劉は、アカマ自動車友好的な買収を提案する。それをにわかに信じられない上層部は、芝野(柴田恭平)を鷲津にホワイトナイトになってくれと依頼させる。
鷲津は数年前に企業買収で世間を騒がせて、外国で暮らしていた。でも、朋友芝野の頼みでは断れないと、日本にやってきて対抗策を立て始める。そして、アカマ自動車はアメリカ系投資銀行の助けも借りて、本格的に対決することになる。
物語の着眼点はいいのだが、2時間半の上映時間は長い。さらに、エピソードとエピソードの区切りがあって、ドラマを接着したような感覚を受けた。映画として密度を濃くするためには、付箋を所々にちりばめて大胆な演出が必要だ。わてはテレビドラマを見ていないが、こういう経済映画は好きでたくさん見ている。派遣社員の使い捨ての問題も取り上げられていて、タイムリーなだけに惜しいと思う。ゴロゴロ。
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