愛を読むひと  THE READER

とらちゃん

2009年06月26日 17:58

この映画は、基本的に戦争の悲劇を描いた悲しい物語だ。第二次世界大戦に関わった国なら、どこでもこういう悲しい話がある。15歳の少年と36歳の女性の肉体関係を、快楽におぼれるような感じで描いているが、付箋が張り巡らされていてロマンチックさはない。間違っても、禁断の愛の物語を期待して映画館に向かってはいけない。

原作は世界的ベストセラーになった「朗読者」で、作者はドイツ人作家のベルンハルト・シュリンクだ。監督はスティーヴン・ダルトリーで、製作にこれが遺作になったアンソニー・ミンゲラとシドニー・ポラックがいる。

ナチスドイツは日本と同じで、すべての国民が同じ方向を向いていた。ドイツ国内で違うことを考えていれば、ゲシュタボ(秘密警察)によって捕らえられしまう。そんなドイツにしっかりと学校に通う15歳の少年マイケル(デヴィッド・クロス)と、なぜか単純作業を仕事にしている36歳の女性ハンナ(ケイト・ウィンスレッド)が肉体関係を結んでしまう。

15歳のマイケルにしてみれば、若さが有り余っている状態だからハンナの女性としての魅力にはまるのは当然だ。学校が終わると、友人たちに見向きもしないでハンナの部屋に行き情事を重ねる。そのうちに、ハンナはマイケルが学校で勉強している本の朗読をしてから、ベッドに行くように頼む。何の疑問も持たないマイケルは、喜んでそれに従う。
映画の冒頭から脚本は、とてもよくできている。1995年57歳になったマイケル(レイフ・ファインズ)が、長い間別れて暮らしていた娘と再会するシーンから始める。娘はたぶん、20歳くらいだと思う。次に1958年、15歳の少年時代のマイケルが登場するシーンになる。36歳のハンナと肉体関係を持ったマイケルは、なぜ彼女が本を読んでくれと頼むのかわからなかった。ハンナは単純労働をまじめにするタイプだったが、昇進して事務仕事に変わると姿を消す。

マイケルが法科大学の学生になって、1966年教授が裁判所の見学に連れて行く。そこでマイケルは、ハンナがナチスのユダヤ人収容所の看守で裁判を受ける被告になっているのを見つける。全く思いがけない再会であり、少年時代になぜ本を読んでくれと頼まれたのか理由がわかり始める。その事情を話せば、ハンナの刑は非常に軽いものになっていた。でも、マイケルはそれができず、後悔の念を抱いて生きることになる。

それから10年後、弁護士になったマイケル(レイフ・ファインズ)は少年時代にハンナに読んで聞かせていた本を、テープに録音して獄中のハンナに届ける。せめてもの、罪滅ぼしのつもりだった。でも、マイケルは結婚に失敗して、妻や娘と疎遠になる。マイケルの人生は、戦争という亡霊に取り付かれた重荷を背負ってしまったのだ。

収監から20年経過して、ハンナが66歳の老女になったときマイケルに電話が刑務所から来る。それは、身寄りがないハンナを迎えに来て欲しいというものだった。でも、マイケルはハンナを引き取ろうとせず、仕事と住む場所を探して世話する道を選ぶ。二人が面会するシーンで、手をしっかりと握ろうとせず、抱きしめてもやらないマイケルの態度は冷たすぎる。おそらく、ハンナが看守になったのも彼女の秘密が原因だと思う。そして、ハンナの選んだことは精神的な病気になっていたからだ。

でも、ラストでマイケルは、すべての事情を長い間離れていた娘に話す。ハンナの死後、数年経過してマイケルはやっと救われる。このラストシーンがなかったら、この映画は全然皆さんにお勧めできない。ハンナの秘密を知りたい方は、是非映画館に足を運んで欲しい。それがわかると、この映画の重厚さがわかるだろう。
関連記事