Disney'sクリスマス・キャロル3D日本語吹き替え版

とらちゃん

2009年11月17日 15:26

チャールズ・ディケンズ原作の同名小説を、「ポーラー・エクスプレス」のロバート・ゼメキス監督が製作・脚本も担当して映画化した。パフォーマンス・キャプチャーという俳優の顔の表情を映像化する技術を使って3D化された映像は、まるで実写のようなリアルさを見せつけた。特に3人のクリスマスの精霊と守銭奴スクルージの体験するシーンが、3D映像ならではの見ごたえを持っている。原作の完成度の高さはご存知のとおりなので普通に作れば秀作になるが、画期的な映像表現が付加されて傑作になっている。

映画会社の考えで、3D映像が見られるのは日本語吹き替え版だけだが全く不自然ではない。山寺宏一らの声優陣がいいので、失望することはない。できれば英語のせりふで、3D映像を見たかった。1843年ごろのロンドンという設定らしく、貧富の差が激しい社会状況が詳細に描かれている。「オリバー・ツイスト」でも描かれていた孤児も出てくるので、記憶にある映像が見られた。

キリスト教社会ではクリスマスは家族で揃って祝うもので、「メリークリスマス」と言わないスクルージはよほどの変人だろう。さらに長年貸金業を共同経営してきたマーレイが死亡して葬儀を行うときに、葬儀社へのチップをケチったりマーレイの両瞼を覆う銅貨も取り上げてしまう行動は神をも恐れないものだ。当時の葬儀は葬儀社が都市郊外の墓地に埋葬するので、故人の家族が埋葬に立ち会わない場合もあった。それから、7年後のクリスマスイブがやってくる。

甥のフレッドがクリスマスイブの食事に誘いに来ても悪態をついて断り、寄付を頼みに来た紳士二人には「貧乏人が死ねば、人減らしになっていい」と言う。また、唯一の使用人で事務員のクラチットには長年給料を上げないし、クリスマスでうれしそうにしていることに嫌味を言う。そんなスクルージは、大邸宅に帰っていくが、全く飾り気がない寂しい屋敷だった。
ドアノブがマーレイの顔に見えるところから、スクルージの不思議な夜が始まる。寝る前にスープを飲んでいると、何者かがドアを開けて自分の部屋に階段を上ってくる。そして、現れたのは鎖のついた金庫をたくさんぶらさげたマーレイの幽霊だった。マーレイの幽霊は、これから三人の精霊がやってくるとだけ告げて去っていく。

最初にやってきたのは、過去のクリスマスの精霊だ。その精霊の体につかまると、空を飛んでいく。子供時代に仲間はずれにされたけど、妹のファンが兄を慕ってくれて家族で楽しんだクリスマスを見せられる。そして、青年時代には奉公先の店主フェジウィックが自分の店で開いたパーティーの様子が見える。若いスクルージは、恋人ベルと知り合い付き合いだす。でも、5年後に婚約はしたがベルの両親が亡くなり持参金がなくなると、愛することをやめ別れてしまう。

次には、現在のクリスマスの精霊が現れる。彼は事務員のスラチットがわずかな収入でつつましくクリスマスを祝い、家族が悪口を言うのに彼だけ自分への感謝の言葉を口にするのを聞く。また、スラチットの末っ子のティムは貧乏なために足の治療ができず、余命が少ないことを知る。

最後には、未来のクリスマスの精霊が黒い影の形で現れる。路上で転がっている自分が通行人を見上げると、「けちなやつが死んで、清々した」とか言っている。そして、墓場に連れて行かれると、そこにあるのはなんと自分の墓だった。もうここまで見せられると、さすがのスクルージも恐怖におののき、悔い改めようと決意する。

これらの情景が非常にリアルな映像で描かれていて、感動してしまった。ジム・キャリーがスクルージや精霊ら七役を演じているという。まさに、カメレオン俳優だ。ディケンズの映画的な原作を、理想的な形で表現した傑作だと思う。この映画を見れば、キリスト教社会の人々がクリスマスをどれほど大切にしているかわかる。ぜひ、映画館で見てほしい。
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