サウスポー

とらちゃん

2016年06月05日 23:17

ジェイク・ギレンホール主演で製作されたリアルなボクシング描写が特徴の映画だ。オーバーなパンチはなるべく使わないで、カメラを殴るような映像もあるので観客はリングに立っている体験ができる。妻に家庭内の決め事やボクシングの試合の決め事まで任せていた男が、自分の短気さで亡くしてしまう。単純なボクサーの再生物語ではなく、ボクサースタイルの変更と父親としての役目を果たすことまで描いている。ボクシングシーンがなくても充分に映画として成立する脚本になっている。

短気で自分の感情を制御できないが猛烈なパンチ力を持ったボクシングの世界チャンピオンのビリー・ホープ(ジェイク・ギレンホール)が、妻モーリーン(レイチェル・マクアダムス)の死ですべてを失う。再起するには自分のボクシングのスタイルも人間性も変えないと無理だった。最初のタイトルマッチでは妻がリングサイドにおり、ピンチになると彼女を見ることで勇気を出すことができた。でも、戦い方はファイタースタイルで、ディフェンスがうまくない。こんな戦い方では2年後には廃人になると妻に言われていた。これが、世の中の生き方とも合致している。

タイトルマッチに勝ってから行われてチャリティーパーティーで、ビリーはライバルのミゲル・マジック・エスコバル(ミゲル・ゴメス)から挑発される。妻を侮辱する言葉に激昂したビリーは相手に殴りかかり、乱闘騒ぎになる。誰かの持っていたピストルが暴発してモーリーンが亡くなってしまう。1年の資格停止処分を受けたビリーは、自宅や車を処分して娘レイラ(ウーナ・ローレンス)とも離れ離れになってしまう。娘は児童養護施設に預けられてしまう。
裁判所が決めたことなので、ビリーが何を言っても通用しない。親としてふさわしい生活を送っていると証明しないと娘を引き取れないのだ。すべてを失ったビリーは、ティック・ウィルズ(フォレスト・ウィテカー)が経営するジムにやってくる。プロ選手は教えておらず、子供相手に初歩的なボクシングを教えているティックは最初無理だと言う。ジムの掃除係の仕事ができるならいいと言う。チャンピオンにまでなった男がジムの掃除係から再出発するのは屈辱的だ。それでも、ビリーは娘との面会がだんだん難しくなる現実に直面して考えを変える。

相手の挑発に乗って冷静さを失うのは自分自身がコントロールできていないからだ。短気な性格を直さないといけない。ディフェンスをしっかりとしてダメージを受けないようにして相手に効果的な攻撃をする。それはチェスのように頭を使うものだと教えられる。最初は反発するが、ビリーはティックの言うとおりに練習する。それと同時に父親としての子供に対する思いやりもできてくる。さらに、映画の題名にもなっているサウスポーにスイッチする秘策も得とくする。

最後のロスでの試合は、相手がカメラに向かってパンチを繰り出す絵がある。まるで観客としてリング上で戦っているような感じだった。父親として娘を迎えることができただけでも感動できる。星5個。

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