運び屋

クリント・イーストウッドが監督・製作・主演を担当して映画化した実録犯罪ドラマだ。麻薬カルテルの存在がベースにあるのだけど、仕事一筋で家族を顧みなかった老人が麻薬の運び屋になり家族との絆を取り戻すまでを描いている。奇想天外な物語なのだけど、これが実話だから驚いてしまう。第二次大戦でイタリアに従軍したという強者であり、その後はユリの栽培で成功したのにネットの普及で没落する。それを挽回するためにたまたま誘われた仕事が麻薬の運び屋だった。

ユリは一日でしぼんでしまう品種を扱っており、園芸の世界で一目置かれる存在になる。手のかかる品種なので、農場に住み込みみたいな感じになる。すると、もう家族のことにかまっていられない。娘イリス(アリソン・イーストウッド)の結婚式には出られない。妻のメアリー(ダイアン・ウィースト)には苦労ばかりかけた。孫(タイッサ・ファーミガ)はかろうじて味方をしてくれるけど、運び屋が忙しくなると彼女にも愛想を尽かされる。

自分の農場が倒産して人手に渡り、娘の結婚式に出られないことになる。そのときに、車の運転をするだけで金を稼げる仕事があると誘われる。今までに交通違反をしたことがなく、無事故無違反だというので即採用される。自宅近くの整備工場で荷物を受け取り、指定されたモーテルで金がダッシュボードに入っているというシステムだ。最初は荷物が何か関知しなかったけど、受け取る報酬の多さに荷物を見たら麻薬だとわかる。

それでも、年の功でドライブを楽しむ境地で運び屋を続ける。警官に呼び止められても引っ越しの最中だと言い、トランクを開けて食べ物を分けてごまかす。途中でDEA(麻薬捜査局)のコリン・ペイツ(ブラッドリー・クーパー)とカフェで一緒になるけど、仕事よりも家族を大事にしないといけないと声をかける。また、ボスの家に呼ばれた時に、カルテルの幹部にはこの仕事はやめたほうがいいとアドバイスをしたりする。ボス(アンディ・ガルシア)と子分たちの関係がうまくいっていないと察知したのだ。ユーモアも見せながら、仕事は順調に行くはずだった。

でも、妻の具合が悪くなり孫から危ないと電話がかかり、様相が変わる。ボスが殺害されて規律重視の子分が取って代わる。時間通りに荷物を届けないと殺すと言われる。でも、彼は家族の元に戻るのだ。そして催促の電話を無視する。もういつ死んでもいいと思ったのだろう。人生最後になって家族のために行動するのだ。この覚悟を決めた男にはもう怖いものはない。

もう格好良すぎるじゃないか。90歳にして仕事も女も現役とはすごいもんだ。肝が座っていて、悪者よりも落ち着いている。こんな老人になりたいもんだ。満点の作品でした。

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