天気の子

君の名は」の新海誠監督が3年ぶりに発表した新作だ。これは野心作です。晴れ男や晴れ女という存在を通して、人間の営みが自然を前にして無力さを主題に持ってきた。相当思い切った演出で、賛否両論巻き起こるだろう。観測史上最大の雨量とか我々は言うけど、たった100年くらいの観測で何がわかるという。江戸時代初期には今の東京は半分海の中だった。それを自然が戻しただけだと解釈している。

警察組織や犯罪の定義をも超えてしまう、登場人物たちの行動や動機がすごい。もはや通常の常識などあってないようなものだ。人間の活動で自然に影響を及ぼしていたと思いたいだろうけど、その壁を簡単に超えていく。地球温暖化という言葉があるけど、人間の活動だけで気候が変動しているとすれば元に戻るのかということだ。

人間が産業活動を自粛すれば、地球規模の気象変動が静まるのか。そんなことはないだろう。もはや地球上の人口は怒涛のように増えている。森嶋穂高は伊豆諸島から東京に家出する。そこで天野陽菜という少女と出会う。その少女は空に願うだけで、晴れ間を呼ぶことができる特殊能力を身に着けていた。そんな特殊能力を使えば、なにかを犠牲にしないといけないのは当然だろう。

穂高と陽菜は「晴れ女ビジネス」を始める。最初は半信半疑だった周辺も実績を積み重ねるにつれて、口コミで評判を呼び都市伝説となる。でも、物語で出てくるように晴れ女は人柱として犠牲になる運命だとわかる。それを受け入れて一人消えていく陽菜。彼女を追いかける穂高はどこまでついていくことができるのか。それは見てのお楽しみだろう。

いずれにしても、人間の決めごとは大雨が洗い流してしまう。残るは個人の思いだけである。警察署から逃げ出すシーンがあるなど、論議を呼びような感じもする。でも、問題はそこではない。大きな自然の力の前では人間の常識は通用しない。人間が自然に合わせるしかないのだ。いままで起きたことがないと言っても、それは自分たちが知らなかっただけである。

まあ、絵は綺麗だし音楽もいい。物語も大胆で挑戦的。こんな冒険を仕掛けてくる新海誠の意気込みは素晴らしい。映画館で見ないと迫力が感じられないと思う。星5個。

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