僕達急行A列車で行こう

とらちゃん

2018年11月06日 16:15

2013年2月13日 22時10分
これが遺作となった森田芳光氏が監督・脚本をし、松山ケンイチと瑛太が主演で作られた鉄道を愛する青年のハートフルコメディだ。鉄道マニアといっても色々あるけど、主人公の二人は鉄道に乗って旅をするのが大好きだ。二人は共通の趣味を通じて友情を深めて人生を切り開いていく。飛行機を使って短時間に移動するのではなく、ゆっくりと確実に少しづつ進むのが好きなので生き方もそうなっている。とかく現代人はネットで即応性を求めるが、この二人はマイペーースを崩さない。その姿勢は映画の演出にも共通していて、もっとのんびりしようよと訴えているみたいだ。

大手不動産会社”のぞみ地所”の営業マン小町圭(松山ケンイチ)は、鉄道マニアで地方を旅しながら音楽を聴くのが趣味だった。小さな町工場”コダマ鉄工所”の2代目小玉健太(瑛太)も、鉄道マニアで列車に乗って旅をしている。旅先で知り合った二人は、意気投合して友人になる。小町が住んでいるマンションが建て替えで追い出されると、コダマ鉄工所の寮に転がり込む。コダマ鉄工所は新しい機械を購入したいが、銀行から融資を受けられない。健太の父哲夫(笹野高史)は昔ながらの職人で、銀行の態度が気に入らない。

小町は趣味を大切にして会社一辺倒の人間ではない。社長の北斗みのり(松坂慶子)に読まれることを知っていても、堂々と意見を言う。仕事面では光るものがあるけど、恋愛では小町も小玉もうまくいかない。登場人物や会社名に鉄道関連の用語が使われている。それが全部わかるなら相当の鉄道マニアだ。鉄道マニアがカメラで景色を撮影するシーンがあるけど、おもしろおかしく描かれている。

小町は社長に見込まれて九州支社に転勤になる。九州の鉄道に乗ることができると喜んで行く。普通なら飛行機で行くのに、小町は新幹線を使う。そして、九州で有名な食品企業ソニックフーズとの交渉役に指名される。そんな大役に抜擢されても、小町は全然ひるまない。それどころか、さっそく趣味のローカル線めぐりに乗り出す。そこで筑紫雅也(ピエール瀧)という鉄道マニアと出会う。鉄道模型の趣味の部屋に案内されて、二人は仲良くなる。

ソニックフーズの社長がのぞみ地所の話し合いに応じるというので、小町も接待の席に駆り出される。そこで出会ったのが、鉄道マニアの筑紫だった。会社のお偉方とは別に、小町と筑紫は親しく話をする。新しい工場建設のネックが果実を加工する機械の部品にあることを知って、小町は東京から小玉を呼び寄せる。趣味の付き合いを抜きに、仕事での成果を求められる。そこからはあまりにも都合よく話が展開する。でも、どこかのんびりしている。そのテンポが心地よい。

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