レイクサイド・マーダーケース

とらちゃん

2018年10月24日 06:38

2005年1月28日 17時52分
ベストセラー作家東野圭吾の「レイクサイド」の、青山真治監督による映画化だ。推理小説やサスペンス小説の第一線を走っている原作者だけに、脚本がよければ見応えがある映画になると思ったが、期待通りの出来だった。役所広司、柄本明、鶴見辰吾、豊川悦司という男優陣と薬師丸ひろ子、杉田かおるらの女優陣の演技合戦も見所だった。日本映画が、こういう社会派サスペンスをエンターテイメントにできるのは難しいと思っていたが、原作さえよければある程度成功するとわかった。もう少し、セリフに頼らないで物語が出来上がれば、ハリウッド級の作品になる。

並木俊介(役所広司)は、広告代理店の営業マンで妻子とは別居中で、カメラマンの高階英里子(真野裕子)と不倫の仲だった。しかし、娘の舞華の中学受験のために、予備校の講師を招いて湖畔の別荘で三家族揃って合宿をすることになり、駆けつける。並木は妻・美菜子(薬師丸ひろ子)と再婚で、娘の舞華とは血のつながりはなかった。でも、やたら受験受験と親が目くじら立てるのは、疑問に思っていた。

ところが別荘にやってくると、別荘の持ち主で医者の藤間(柄本明)と妻(黒田福美)や美菜子の友人で関谷靖子(杉田かおる)とその夫孝史(鶴見辰吾)たちは、面接の練習から全く取り組み方が違っていた。講師の津久見(豊川悦司)は、彼らが目指している有名私立中学の出身で、親の面接に対する受け応えから厳しく指導していた。並木は志望理由を聞かれて、しどろもどろになってしまい、妻に叱られる。

そんなところに、並木の愛人で英里子が仕事の忘れ物を届けに来たと言って、別荘に現れる。妻にはわかっていないはずの関係がばれるのではないかと、並木は気が動転する。英里子は近くのホテルに予約を入れたと言い、並木に夜会いたいと告げる。子供たちと講師の津久見は、別の建物で勉強と寝起きをしていた。夜になって理由を見つけて別荘を抜け出すが、並木は英里子と連絡がつかない。そこで、夜遅くになって別荘に戻ると、なんと居間に英里子の死体が転がっていて、大人連中が深刻な顔で話し合っていた。

並木は彼らから、とんでもないことを聞かされる。妻の美菜子が、並木との仲をねたんで愛人である英里子を殺したというのだ。さらに、並木は5人の大人から隠ぺい工作をするように説得される。有名中学受験のための勉強会で、殺人が行われたとなれば、子供たちの受験も彼らの社会的地位もなくなってしまうのだ。徐々に説得されて、隠ぺい工作に加担する並木は、どうしても妻が愛人を殺したことが信じられず、真相を探ろうとするがとんでもない真実が隠されていた。

なんとも、重厚なテーマの緊迫感溢れる映画だ。ネタが明らかになってからの展開が、やや甘い感じがする。もっと、学歴社会に囚われた大人たちの醜い姿や社会のゆがみを浮き彫りにしてもよかった。大人の背中を見て子は育つと言うが、常識が非常識になりつつある世の中の不条理を描いた意欲作だ。

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