レ・ミゼラブル
2005年10月23日 15時08分
1998年公開、ヴィクトル・ユーゴー原作の有名な小説「ああ、無情」の映画化だ。何回も映画化されたり、舞台で上演されたりしていて有名すぎる小説だ。わては子供の頃、世界児童文学全集の中で簡単にされた本を読んだことがある。大人になってから読んでいなかったので、今回映画で見て色々調べたりして勉強になった。
映画の出来は原作のエッセンスを凝縮して、部分的に焦点を当てているのが非常に効果的になっていてすばらしい。ナポレオン1世の亡き後の混乱のパリの様子が、実に生き生きと描かれていて一見の価値がある。原作者自身が1802~1885年という時代を生きていたこともあって、時代の波に飲み込まれる庶民の悲哀がよく描かれている。
1812年、ジャン・ヴァルジャン(リーアム・ニーソン)は一斤のパンを盗んだ罪で19年間投獄されて重労働を続けてきてやっと仮釈放された。あくまでも仮釈放なので、1週間に一度当局に顔を出さないといけない。どこにも行く当てがなかったジャンは、教会にたどり着き年老いたミリピル司教(ピーター・ヴォーン)に食べ物と寝る場所を提供されて助けてもらう。
食事を取る時に銀の食器を出されて驚いたジャンは、真夜中になって銀の食器を盗んで逃げる。ところが、ジャンはすぐに捕まって教会に戻される。司教は、「その銀の食器は差し上げたものだ。銀の燈台も上げようと思ったら、忘れていった。」と言って、燈台まで持たせてくれた。ジャンは無事解放され、自由になった。ジャンは司教の慈悲を心に刻み、悔い改めてまじめな生活を送る。
9年後、ヴィゴーの工場主となって市長にも選ばれたジャン・ヴァルジャンは、人望もあって周囲の人々から慕われていた。もちろん、名前は代えて彼の過去を知るものはいない。そんな地方の町にパリから、新しい警察署長がやってくる。それは、ジャベール(ジェフリー・ラッシュ)で刑務所でジャン・ヴァルジャンの監視役をしていた男だった。
ある日、老人が馬車の下敷きになった時工場主が自ら力を貸して助け出した。それを見たジャベール署長は、彼がジャン・ヴァルジャンであると確信する。その頃、自分の工場で首になった女性フォンティーヌ(ユマ・サーマン)がいた。ジャンは彼女に会って、病気の娘コゼットを引き取りに行くことを約束する。疑いの目を強くするジャベール署長のことを気にしたジャンは、全財産を処分して逃げる準備をする。
そんな時、ジャン・ヴァルジャンという同姓同名の名前の人物が、窃盗の罪で裁判にかけられる。ジャンの刑務所仲間が証言をしていたので、ジャンは自分こそほんとうのジャン・ヴァルジャンだと名乗り出てその男の無実を証明する。でも、追われる身となったジャンは、フォンティーヌの死に際を見届け馬車で逃げる。フォンティーヌの娘コゼットを強欲な里親から取り戻したジャンは、コゼットを抱いてパリの修道院に逃げ込む。ジャベールは城壁の入り口で検問をしていたが、壁をよじ登ってジャンは修道院に入ることに成功する。
それから10年後、コゼット(クレア・デインズ)はもう一年で尼僧になるまでに成長する。でも、コゼットは尼僧にはならず、町に出たいとジャンに頼む。コゼットを父として育ててきたジャンは、コゼットの希望を受け入れ慈善事業を行う。その頃、パリの警部になっていたジャベールは、共和制復活を目指す運動家を取り締まっていた。1832年、ナポレオンが皇帝の地位を追われて王政が復活してころだ。コゼットは、共和主義者のマリウス(ハンス・マンシン)と恋仲になってしまう。自分たちの平穏な生活が脅かされる危険を恐れる父ジャンは、娘にほんとうのことを言うか言わないかで悩む。ジャベール警部の追跡を察知したジャンは、使用人と娘コゼットと身ひとつで逃げ出す。
マリウスとコゼットは、お互いのことを諦めきれず再び会うようになってしまう。意を決したジャンは、コゼットに真実を告げる。それでも、コゼットはジャンを信じていた。マリウスたちは蜂起して、警官隊と衝突をする。ジャベール警部は汚い服に着替えて、バリケードの中に潜入してジャンを追ってくる。こうなると、個人的な執念というか恨みみたいなもんだ。哀れにも思える。ジャベールは捕まって処刑されることになるが、ジャンに助けられてバリケードの外に出る。でも、当局は反撃に出て大砲で攻撃をする。倒れたマリウスをジャンは背負って、下水道に逃げ込む。今度は、下水道から出てきたところをジャベールに捕まる。
怪我をしたマリウスを救急車に乗せて運んでもらったジャンは、死を覚悟する。でも、ジャベールは、ジャンを前にして「自分は今までに法に触れることを何一つしたことがない。」と告げ、ジャンの手錠を外し自分の手にはめてセーヌ川に身を投げた。ジャンは自由になったのだ。何が正義で何が悪なのか、混乱の時代でわからない。原作の小説より省略されたエピソードも多いが、大規模なロケを行ったり起承転結のしっかりした脚本のために違和感は全くない。
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