恋愛時代

とらちゃん

2018年10月24日 13:53

2005年1月26日 19時52分
1954年公開で、マルチェロ・マストロヤンニとマリナ・ヴラディ主演の恋愛コメディの傑作だ。監督は、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の脚本で知られているジュゼッペ・デ・サントスで脚本も共同で担当している。主役の二人は、共に映画初出演と言ってもよい作品である。マストロヤンニは30歳で、未公開作の次の第二作目だ。また、マリナは16歳でほんとうに初出演作だ。監督の手腕がすばらしく、貧しいながらも明るい庶民の生活を生き生きと描いている。傑作だ。

イタリアのある農村で、貧しいながらも明るく暮らしている二つの農家があった。隣り合わせの家には、それぞれパスクアーレ(マルチェロ・マストロヤンニ)という若者とアンジェラ(マリナ・ヴラディ)という綺麗な少女がいた。二人は小さい頃から仲が良く、結婚の約束をしていた。でも、いざ結婚となると費用が掛かるので、二人は懸命に働いていた。そして、パクスアーレは両家の境にある溝にオレンジの木を42本埋めるのを夢にしていた。

2年間も働いてきたが、全くお金が貯まらないのでそろそろなんとかしないといけないと、二家族の両親も祖父母も考えていた。クロッキオ家のパクスアーレも、カファッラ家のアンジェラも、結婚にどのくらいの費用が掛かるのか計算しようとした。指輪やウェディングドレス、盛大な祭壇のある結婚式、それから大勢のお客を招いてのパーティー、新婚旅行などをフルコースでやると全費用は、総額66万リラも掛かってしまう。しかし、両家の貯金は7万リラと5万リラしかなく、大勢の家族の教育費など何かと入用だった。そこで、両家族が全員集合して会議が開かれる。

喧々諤々の議論の末、出た結論は二人にわざと駆け落ちをさせるというものだった。ほんとうは昔から仲がいい両家だが、見せかけのけんかをして険悪な関係を世間に見せて、若い二人に駆け落ちさせるというものだった。駆け落ちをさせて、男女の仲になった二人は結婚させないといけなくなるという習慣を逆手に取った作戦だった。さっそく、通りを隔てて窓を面している両家は、家族総出でけんかを始める。

このけんかの様子が、実におもしろい。カーテンを上げて悪口を言い合ったり、そのうちに本気になってしまったりと笑えて来る。若い二人は、作戦通りに自転車に乗って町外れに出かける。そして、自分たちの畑の農機具小屋に辿り着く。ところが、アヒルや鶏やロバがいて初夜を迎える雰囲気ではない。その頃、実家の方では大騒ぎのけんかになってしまい、警官までお出ましになって、ほんとうに二人を追いかけに行くことになる。二家族とも、二人の結婚をやめさせようと気が変わったのだ。町中の人々が追いかけるのだから、おもしろい。

若い二人は、町の人が追いかけてきたので逃げる。湖に小船で漕ぎ出して、途中で陸に上がって追っ手をまく。パクスアーレは、もうだめだと諦めかける。その後、自転車の乗り方をアンジェラに教えたり、海岸でアンジェラが海に入ってパスクアーレの気持ちをほぐすことに成功する。そして、二人はアンジェラの髪の毛にパーマを掛けただけで結婚式を挙げてしまう。両家族が教会に着いた時には、式は終わり笑顔の二人が扉を開けて出てきた。すると、今まで争っていた両家族に笑いが戻る。なお、この作品は、ビデオもDVDも発売されていない。わては、BSで放送されたものを見た。傑作だと思う。

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