オール・ユー・ニード・イズ・キル
桜坂洋のライトノベルをトム・クルーズ主演で映画化したSFアクション大作だ。地球外生物によって侵略された地球は壊滅的な被害をこうむり、イギリスからフランスに最終決戦をするまで追い込まれている。そこへ広報担当の将校が突然放り込まれて、不得意な戦闘を強制される。すぐに死んでしまうのだけど、同じ行動を繰り返していることに気がつく。時間ループという仕組みはうまいことを考えたものだ。人間側の葛藤は丁寧に描かれているのに、侵略者はまるで機械みたいだ。この映画はエイリアンとの対決が主要テーマではなく、人間の学習能力の向上の物語になっている。
侵略者の攻略方法は、カーター博士(ノア・テイラー)が発見している。で、その方法を他の人間に納得させることができないのだ。あたかも、地球環境が悪くなる原因を一つの要因に限定している状況を似ている。テロは絶対に悪だと決めつけるのにも似ている。世界各地で起きているテロの背景には色々な要因が絡み合っている。一旦信じ込んだ人々を違う方向に向けるのは、並大抵ではない。ブリガム将軍(ブレンダン・グリーソン)も、広報担当の将校ケイジ(トム・クルーズ)の上司になるファレウ軍曹(ビル・バクストン)も路線から外れることができない。
その路線を作ったのは、地球の外からやってきた侵略者なのだ。おそらく、その侵略者は何回も戦闘に人間を駆り出して、人数を減らしていく方法をとっているのだと思う。圧倒的な戦闘力の差を持っているのに、もう少しで倒すことができると思わせて人数を減らしていく。ウィリアム・ケイジだけがタイムループの仕組みに気がつく。そして戦場で、カリスマ的女戦士リタ(エイミー・ブラント)と出会う。「生き返ったら自分を探せ」という言葉を聞いたケイジは、出撃前のリタにたどり着く。そして、戦闘訓練を受ける。
訓練当初、ケイジは弱々しい。何回も何回も同じことを繰り返していくうちに、ケイジはどこにいつ敵が出現するか覚える。訓練の成果も徐々に出てきて、戦場でリタと同等に戦えるようになる。タイムループしている自覚を持っているのが、ケイジだけしかいないという設定がうまい。そして、リタの知り合いのカーター博士の発明したエイリアンの親分を始末する装置を入手しようとする。その入手も簡単ではなくて何回も試行錯誤する。敵のボスがルーブル美術館にいることを突き止めて、ケイジとリタは仲間の助けを得て乗り込んでいく。
物語に深みはあまりない。アクションやロボットスーツが格好いいので、それなりに楽しい。3Dで見ると、あたかも自分が戦っている体験ができると思う。わては3Dが苦手なので2D字幕版を見た。日本原作の小説がこういうスタリッシュな映像作品にできるなら、邦画でもできるのではないか。ハリウッドに企画を持っていかれるよりも、国内で映画化してほしいものだ。そして、物語に深みを与えて欲しい。
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