冷たい雨に撃て、約束の銃弾を

他の地方では5月に公開された作品が、やっと10月下旬になってやってきた。ジョニー・トー監督の作品は今までに見たことがなかったけど、こういうハードボイルトな映画が大好きだ。香港・フランス合作でカンヌ映画祭にも出展された。香港の俳優だけでなく、フランスのジョニー・アリディが加わっているのですばらしいアクセントになっている。娘家族を殺されたフランス人の初老の男性が、異邦の地で復讐を遂げる姿が多種多様なガンを使って激しく描かれている。リアルな描写だけでなく、ときにファンタジーな映像もいい。

マカオの高級住宅街でフランス人女性アイリーン(シルヴィー・トンプソン)は、料理をしている。雨が激しく降る中、夫と二人の子供が帰ってくる。子供の雨具を取ったら、誰かが玄関のチャイムを鳴らす。夫がのぞき窓から外を見ると、いきなり銃で撃たれてしまう。アイリーンは子供二人を連れて2階に隠れるが、彼女だけが奇跡的に助かる。フランスから父フランシス・コステロ(ジョニー・アリディ)がやってくる。喉に呼吸器をつけられた彼女は口が利けないので、コステロは新聞の文字を指で指しながら犯人の特徴を知る。

アイリーンが記憶していたのは、「犯人は3名で、一人の耳を撃ったこと」であった。そして、「復讐してくれ(vengeance:フランス語)」と頼まれる。コステロは言われなくても、そのつもりだったようだ。ウォン刑事(マギー・シュー)から説明を受けたとき、彼は現場写真をポケットに入れる。そして、なぜか写真の一枚一枚にマジックで説明を書く。そして、ホテルの部屋に戻ったときに、見知らぬ三人の男に会う。その中一人がピストルを持っているのを見るが、コステロは黙って自分の部屋に帰る。

ホテルで出会った三人の男は、マフィアのボスであるジョージ・ファン(サイモン・ヤム)の直属の殺し屋だ。彼らがやったのは、情婦とその男だ。犯人を目撃したコステロは警察で面通しをするが、廊下で見た背の高い男チャウ(ラム・カートン)を見つけても知らないと言う。その後、コステロはチャウのあとをつけて、リーダー格のクワイ(アンソニー・ウォン)と太ったフェイロウ(ラム・シュー)に囲まれる。一瞬緊張が走るが、コステロは彼らに娘の家族を殺した復讐の手助けを依頼する。パリにある自分のレストランも別荘もくれてやるから、助けて欲しいと頼むのだ。

三人はコステロが只者ではないと感じていたので、秘密を共有する意味もあり依頼を引き受ける。娘の家に来て、三人は手がかりを探す。コステロは娘が買っておいた食材で、パスタの料理を作る。三人は、「一人は左利きで、ショットガンとマッドマックス(映画マッドマックスで使われたショットガンの銃身を短くした銃)と44マグナムが使われた」という手がかりを探り出した。そこで食事を共にした彼らは、信頼関係ができる。

やっと仲間になったのに、コステロはメンバーの写真を撮り名前をメモする。どうも、このコステロの動作が物語のふせんになってくる。コステロは、しっかりとメモをしないといけない事情があるのだ。やがて、標的がマカオではなく香港にいるとわかり、彼らは船で移動する。香港での夜の銃撃戦の最中に、コステロは抱えていた事情のために負傷する。そこで、彼は頭に20年前にうけた銃弾が残っていて、少しづつ記憶がなくなっていくと打ち明ける。さらに、標的の黒幕が自分たちのボスであるファンだとわかってしまう。

自分たちの所属する組織のボスを殺す仕事を引き受けてしまった三人は、もはや後に引けない状態になる。アンソニー・ウォンは「インファナル・アフェア」の頃からすごい存在感を持っていると思っていた。他の二人も大変に格好いい。マカオに帰ってきてからの対決シーンは滅びの美学を感じるし、コステロが亡くなった人々と再会する月夜のシーンはファンタジーになっている。コステロがシールを付けられたファンを追っていく場面は、彼の病気の深刻さが痛いほどわかる。ラストのビックママ(ミシェル・イエ)や子供たちとコステロが笑っているシーンは、夢のような幸福に包まれている。



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