暗黒街のふたり

2004年06月17日 20時48分38秒
1973年公開のアラン・ドロンとジャン・ギャバン主演の、前科者に対する偏見から悲劇に落ちていく青年を描いた悲しい物語だ。フランスでは、1977年にギロチン刑が廃止されるまで200年間に渡って死刑は首を切り落とす残酷な刑罰が行われていた。大小2台のギロチン台があり、一つは移動式で死刑が行われる刑務所に移動していた。全く、驚くべきことだがあまりにも簡単に実行できるので多くの人が犠牲になったと思われる。そして、この映画のような偏見と捜査側の思い込みから死刑に追い込まれた人間も多いに違いない。

ジーノ・ストラブリッジ(アラン・ドロン)は、銀行強盗で12年の刑期を言い渡され模範囚として過ごしてきた。10年を経過した時に、保護司のジェルマン(ジャン・ギャバン)の口ぞえで仮釈放になる。ジーノの妻ソフィー(イラリア・オッキーニ)は、毎日ジーノの好きなレコードを塀の外でかけてジーノの出所を待っていた。妻は花屋を経営していて、足を洗って新生活を始めようとしていた。

保護司のジェルマンとは、家族ぐるみの付き合いをして前途は明るいと思われた。ところが、ジェルマンは左遷されモンペリエ(地中海沿岸の小さな町)に移動になってしまう。ジーノは、ジェルマンを頼って同じ町に引っ越す。そして、刑務所で身に付けた印刷の技術を生かすために印刷屋で働き始める。

ある日、ジェルマンの家族とピクニックに行った帰りに、反対方向から来た暴走してきた2台の車を避けるためにジーノの車は横転し、妻が亡くなってしまう。最初はその悲しみに打ちひしがれたが、ジェルマンの家族とサイクリングやカヌー、山登りをしたりして、徐々に明るさを取り戻していく。

そして、印刷工場の工場長からも信頼を受けて仕事も軌道に乗ってきたところに恋人ルシー(ミムジー・ファーマー)ができる。彼女は銀行員だったが、ジーノはいつか過去を告白しようと思っていた。そんな平和な日々を破ったのは、10年以上前の銀行強盗で彼を逮捕したゴワトロ刑事(ミシェル・ブーケ)だった。ゴワトロ刑事はモンペリエに転勤になったのだ。ジーノがまだ銀行強盗から足を洗っていないと思い込み、彼を目の仇にして見張りだす。

そんな所へ、昔の銀行強盗の仲間が現れて、いっしょに強盗をしようと誘う。しかし、ジーノはきっぱりと断わるがゴワトロ刑事は疑いの目を逸らすことはなかった。ジーノは、今後彼らと会わないと誓約書を書かせられる。ジーノは、「おれもソフィーといっしょに死ねばよかった」とジェルマンに弱気を吐く。そして、昔の仲間がついに強盗を仕出かし逮捕される。ゴワトロ刑事は、ジーノも仲間だという証拠を探す。ジーノは徐々に追い詰められ、平常心を保てなくなる。

しかし、元々関係ないので確実な証拠などあるはずもない。焦った刑事は、ジーノの恋人ルシーの家に押しかけ脅迫する。そこへ来たジーノは、怒りに狂いゴワトロ刑事に襲い掛かり首を絞めて殺してしまう。殺人者となってしまったジーノは、裁判に掛けられ死刑の判決を受けてしまう。裁判長の偏見に満ちた議事進行、偏見に満ちた検察側の主張、前歴者に偏見を持って居眠りをする陪審員、何もかもジーノには不利だった。

非常に重いテーマである。悲劇に落ちてしまう悲しい青年を演じるとまさに絵になるアラン・ドロンと、その運命を救えないやりきれなさを体全体で演じるジャン・ギャバン。二人の最後の共演作になった。


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