犬と猫と人間と

とらちゃん

2010年01月10日 00:18

浜松のシネマイーラで、公開初日に見た。飯田基晴監督が舞台挨拶をするというので、16時10分からの回で見た。浜松にある動物愛護団体がチケットを共同して販売したので、お客さんも多く入った。「1/4の奇跡~ほんとうのことだから」というドキュメンタリー映画もよかったが、この「犬と猫と人間と」はわてが自信を持ってお勧めできる。ハリウッドの娯楽大作もいいけど、こういう文部科学省推薦映画と言えるような映画も是非見てほしい。

この映画の宣伝文句として、「犬猫の殺処分が年間30万頭という現実」という言葉が使われているがちょっと違うと思った。それは確かに現実なのだが、このドキュメンタリー映画で一番表現されていることは「命の大切さ」だ。多摩川の河川敷で暮らしているホームレスの方々が、捨て猫の餌を与えている現状が一番象徴的だ。日本という国は、犬や猫をペット産業の資源として扱っている。その産業を支えるためには、犬や猫は可愛いものだと思わせる必要がある。

確かに犬や猫は可愛いのだけど、年老いていく。15年くらいの寿命で、亡くなってしまう。日本でペットを飼う人々が、その死まで面倒をする覚悟ができているか。わてには、その覚悟がない。よく記事にしているフーちゃんは、とら家の飼い犬ではない。フーちゃん家の飼い犬だ。イギリスでは犬や猫は、ペットショップで売られていない。動物保護施設でしか入手することができないのだ。犬や猫を飼う覚悟や余裕があるのか、しっかりとチェックされて初めて飼うことができる。
現在、日本でも行政側も問題だと認識し始めている。神奈川県動物愛護協会では、犬の里親募集のために躾に力を入れている。子犬はすぐに里親が見つかるが、成犬はなかなか里親が見つからない。『しろえもん』という犬は、最初は散歩にも行かないツワモノの犬だった。でも、映画の終盤にはリードなしでも左サイド保持ができるようになる。

神戸市動物管理センターでは、殺処分の現状が紹介される。なんと、センター周辺の住民が反対するので、センター内では殺処分しない。工場のベルトコンベアーのように、どこで処分されているのか特定されないようにしている。それでも、そこで働いている方々は動物が好きでその仕事をしている。せめて、自分たちの手で命の幕引きをしてあげたいというのだ。なんという公僕精神だろう。

山梨県の山奥の多頭飼育現場では、ボランティアの男性と大学生たちが亡くなった所有者に代わって面倒を見ている。その現場では、マスコミに報道されたときだけ寄付が集まる。熱が冷めると、すぐに運営が厳しくなる。日本の現状はまさに、熱しやすく冷めやすいのだ。「崖っぷち犬」の報道を記憶の方もおられるだろう、里親募集に人々が殺到した。でも、そのほかの犬たちは見向きもされなかった。

この映画を作るように依頼した稲葉恵子さんの「人間よりも動物の方がまし」という言葉や、カメラマンのマルコ・ブルーノさんの「この国で犬に生まれなくてよかった」という言葉の意味がわかるだろうか。多摩川で捨て猫の写真を撮っている小西修さんは、「大雨のときにホームレスの小屋と猫がいっしょに一瞬で流された」と言う。この国では、人間の命も犬や猫の命も大雨があると流されてしまうのか。人間も社会も文化も変わらないと、いけないのだ。
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