ノルウェイの森

とらちゃん

2010年12月13日 22:06

1987年発表の村上春樹による世界的ベストセラー小説を原作に、トラン・アン・ユン監督が脚本も担当して映画化した。すでに世界50カ国での公開が決定していて、それなりの興行成績を上げるだろう。将来ノーベル文学賞を受賞するかもしれない作家の映画化は、非常にハードルが高い。映画化した製作陣にも、それを見て解釈する観客にも、両者にとってハードルが高い。133分の上映時間に無駄なシーンはないと思うけど、見ている最中で眠くなりそうになった。本ならばしおりをはさんで中断できるけど、映画はずっと集中していないと良さがわからない。

タクシーが2km100円で走っている時代は、学生運動で大学が荒れている1969年だ。高校の親友キズキを自殺で亡くしたワタナベ(松山ケンイチ)は、その思い出から遠ざかるために東京の大学に進学する。早稲田大学がモデルなので、相当の秀才だ。学生運動には全く関心を示さず、読書三昧のワタナベはキズキの元恋人直子(菊池凛子)に出会う。大学生で早熟な連中は、愛と性が密に結びついていたと記憶がある。わては全く暢気で、この作品の登場人物のような青春を送っていない。

ワタナベと直子は、直子の二十歳の誕生日に結ばれる。しかし、直子はキズキとの間にトラウマを抱えており、精神を蝕んでいく。精神病院から京都の療養所阿美寮に移った直子は、徐々に回復してワタナベに手紙を返すことができるようになる。ワタナベは直子を愛していたがなかなか会えないので、緑(水原希子)に出会い引かれていく。ワタナベの年上の友人永沢(玉山鉄二)が、プレイボーイなのでいっしょにナンパしにいく。そんなわけで、ワタナベは直子と緑の両方と付き合うことになる。でも、一応直子が存命中はそちらを優先している。
直子がキズキとの間に抱えていたトラウマは、どうしてもうまくセックスができないというものだ。直子が濡れないというのだ。やっとワタナベとの逢瀬でうまくできたけど、それが自分を責める原因になる。ワタナベは、精神を病んでいく直子を放置できずに京都の療養所まで会いに行く。大学時代は、若気のいたりで欲望を抑えるのが難しい。

草原や雪山での撮影が、非常に美しい。ワタナベが一人で、海の波が押し寄せる断崖で野宿をするシーンは多少やりすぎだと思った。そのほかのシーンは、説明的描写にならず映像の力で表現されていた。これは、トラン・アン・ユン監督の力量だろう。ただ、精神病院に入院したことがあるわてから見ると、自殺間際の直子は閉鎖病棟に入院が必要な症状になっていた。なぜそのような措置が取られていないのか、疑問だ。

この映画だけで、原作を読んでいないわてでも登場人物たちの苦悩がしっかりと伝わってきた。青春の思い出は、ときにこういう残酷さを含んでいるものだ。苦い思い出の一つや二つ、誰でも心の奥底にあるものだ。そういう点で、この映画化は成功している。
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