海難1890

日本トルコ友好125周年を記念して製作された合作の作品だ。1890年のエルトゥールル号海難事故と1985年のテヘラン邦人救出劇をうまく組み合わせて、両国友好の歴史を描いている。両方の事件をある程度知っていたけど、時代が近いテヘランのエピソードの最中に涙が止まらなかった。教科書で日本との歴史を勉強しているお国柄がどのように形成されたか、歴史の重みと教育の大切さが痛いほど伝わってきた。映画としてしっかりした骨組みでできているのが、好感度をあげていた。

映画の冒頭で、一人の人間が海の中で沈んでいく。それがいつの時代なのか観客はわからない。映画が進むとそのシーンが判明する。しかも一番重要なシーンであることがわかる。沈んでいく人物はムスタファ(ケナン・エジェ)というオスマン帝国の海軍士官だ。明治22年(1890)、和歌山県樫野崎沖で遭難したエルトゥールル号の乗員だ。彼らは明治天皇への返礼のために、イスタンブールから海路をやってきたのだ。

トルコへ帰る途中、和歌山県串本町沖で遭難して蒸気エンジンが爆発する。船が木っ端微塵になったので、犠牲者が多く出た。田村元貞(内野聖陽)やハル(忽那汐里)らを中心に懸命の救助活動を展開する。彼らの村は漁業で生計を立てており、非常に貧しい村だった。海で困った人間がいたら、絶対に助けるのが掟だと思っている。台風の猛烈なシケの中を海の中に潜って救難を行う。そこで、映画冒頭の沈んでいくムスタファが救われる。

1985年のイランのテヘランで、停戦中だったイラクのフセイン大統領が戦闘開始を宣言する。わてはこのニュースを実際に聞いたことを覚えている。トルコが日本人の救出のためにわざわざ飛行機を都合してくれて、取り残された人々が救われた。その際に、日本航空は安全が保証されない限り無理だと言うし、自衛隊に至っては国会の承認が必要だと人事みたいな言い訳をする。欧米各国は自分の国民の救出で手一杯であり、トルコだけがチャーター便を都合してくれた。

映画では多少脚色されているけど、ほぼ事実にもとづく内容になっている。明治時代のことと、昭和の事件がしっかりと結びついているのが感動的だ。主人公二人が二役を演じているのも、効果的な演出だった。トルコが日本に対して好意的なのに、日本はトルコに対してどうなのかもう少し考え直したい認識だと思った。国際交流は付け刃では深まらない。その時々の利害で対立しても、人間の交流が大切なのだと思った。エンターテイメントとしてしっかりと成立しているのがいい。星4個。

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この記事へのコメント
日土が合作作品でしたが、もっと掘り下げても良かったですね。歴史として知っていても、細かく描くことによっていろんなドラマが描けたかも。
けっこう勉強になった作品でした。
こちらからもTBお願いします。
Posted by atts1964 at 2015年12月16日 11:25
確かにもっと掘り下げることは必要だったかもしれません。

大統領が最後に出てくるような映画なので、両国の配分も必要だったと思います。

これは予算や政治的配慮も含まれます。

そういう条件があっても、よく出来た映画だと思います。

こちらこそ、TBをお願いします。

たまに、TBアドレスを忘れることがあるので大目に見てください。
Posted by とらちゃんとらちゃん at 2015年12月16日 20:32
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