散り椿

木村大作監督・撮影、原作葉室麟、主演岡田准一で映画化された時代劇だ。江戸享保年間、吉宗の改革で年貢の取り立てが厳しくなり庶民の生活は苦しい。藩に特産品がないと財政も苦しくなる時代背景がある。新田開発をするか特産品を作るかの方法が手っ取り早い。北アルプスが見える雪国の扇野藩(架空)が舞台だ。散り椿というのは山茶花のように花びらがパラパラと落ちる種類で、花がポトっとは落ちない。

花がポトっと落ちる椿だと、すぐに切腹して終わってしまう。でも、この映画は散り椿なので主人公が切腹することはないと予想できる。雪の降る中で花びらがひらひらと落ちる様子が綺麗である。瓜生新兵衛(岡田准一)の生き方もそれと同じで、今にも命を落としそうになるけどなんとか生き延びると想像できる。

藩の不正を上役に訴えたのにも関わらず、友が死んでしまったりもみ消し工作にあって故郷を離れることになる。妻の篠(麻生久美子)と京都に逃れて貧しい暮らしをしていたが、妻が亡くなる。その寸前に故郷にいるかつての友人の榊原采女(西島秀俊)を助けてほしいという願いを聞いて、故郷に帰る。もう一つの願いは故郷に帰りたいというものだった。

篠の妹・坂下里見(黒木華)と弟・坂下藤吾(池松壮亮)の家に逗留して、新兵衛はその後の藩の様子を探る。藩の役人たちはなんで今さら戻ってきたのかと疑問に思う者が多く、中には自分の悪事がバレてしまうのではと危惧する悪玉もいる。そこへ、江戸から時期藩主となる若様が帰ってくることになって、それまでになんとか問題を解消したいと動き出すのだ。

もうここからは新兵衛さえいなくなればいいと言わんばかりに、賊が襲撃してくる。それを新兵衛は目にも止まらぬ刀さばきで倒していく。人間関係は入り乱れており、昨日の友は今日の敵という状態でわけがわからなくなる。ただ、藩の将来を考えて自分の欲望を捨てて行動する新兵衛が清々しい。これは今年度の日本映画でベスト3に入るだろう。

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