レインメーカー
2003年08月04日 14時56分59秒
1997年公開のフランシス・フォード・コッポラが、製作総指揮・脚本・監督をした法廷ドラマだ。原作はジョン・グリシャムの『原告側弁護人』で、主役は今をときめくマット・デイモンとクレア・デーンズだ。この映画も何回も見ている。でも、いいですね。現代のアメリカ社会の病理が、ほとんど全部入っている。特に訴訟社会としての問題提起は、的確だ。
司法の社会も資本主義の毒に侵されている現実は、なにやらアメリカの社会の闇の奥深さを垣間見ることができる。レインメーカーとは、雨のように利益をもたらすものという意味だ。
1960年代の公民権運動の弁護士の活躍を見て、法学部へ進学したルーディ(マット・デイモン)は就職先を探すのに手間取り、結局悪徳弁護士のブルーザー・ストーン(ミッキー・ローク)の事務所に雇われる。相棒のデック(ダニー・デヴィート)といっしょに病院に通い、交通事故の被害者から委任状を取り付けたりする。デックは弁護士試験に受かっていないが、裁判所のことには精通しており、実際の社会の中での弁護士の姿を教えていく。
ルーディはロースクール時代に尋ねた事のある白血病の患者ダニー(ジョニー・ウィットワース)に、保険金の支払いを渋っている悪徳保険会社ベネフィット社を訴える仕事に取り掛かる。司法試験に合格したルーディは、晴れて弁護士になるがまだ裁判所での宣誓が、済んでいなかった。
雇い主のブルーザーが脱税容疑で摘発され、雲隠れしてしまう。デックの提案で、ルーディは小さな法律事務所を設立する。始めての査問会の日、保険会社側の弁護士ドラモンド(ジョン・ヴォイド)の口ぞえで、弁護士になることができた。保険会社側は示談を誘ってくるが、ルーディは断わる。担当判事がプールで心臓発作で亡くなり、人権派のタイロン・キプラー(ダニー・クローヴァー)に交代する。
流れはルーディ側に有利に働くかと思われたが、相手は時給1000ドルの高給取りの弁護士団であり、とても学校を出たての弁護士ルーディの勝てる相手ではなかった。貧しい人々から保険料を取り立て、病気になって保険料を請求しても最初は全部断わるようにマニュアル化されていた。それでも請求してくる人にも断わり続け、あきらめさせる。こういうやり方がまかり通っていたのだ。
ルーディはある日、いつもの病院通いの時、夫から暴力を受け続けているケリー(クレア・ジョーンズ)に出会いなんとか助けようとする。保険会社との裁判と家庭内暴力の被害者ケリーと、二つの問題を抱えてしまう。
法廷劇でのジョン・ヴォイドの存在感は、なかなかすごい。オスカー俳優であり、アンジェリーナ・ジョリーの父親として知られている。それにしても、50年以上も現役で最前線で活躍するのは、並大抵ではない。顔も良く見るとアンジェリーナと似ている。顔の輪郭や唇はそっくりだ。
映画は雲隠れ中のブルーザーのアドバイスで、形勢逆転し保険会社は敗訴する。現実的賠償金15万ドル、懲罰的賠償金5000万ドルを言い渡される。結局、保険会社は破産し、保険金は受け取れない。また、ルーディとケリーは、弁護士の世界に別れをし、司法関係の教育者になる決意をする。
弁護士を続ければ、自分もいつかはドラモンドのような高給取りの弁護士になり、もうけを、勝つことを至上主義にしなければならなくなる。それは、必ずしも社会の弱者を助ける事にならないのだ。なんとも、やるせない話だ。
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