ロイ・ビーン
2003年09月12日 17時19分02秒
1972年公開のジョン・ヒューストン監督、ポール・ニューマン主演の異色西部劇だ。NHKBSで放送されたものを録画して見た。19世紀後半のテキサス州、ペコス川の西側は法律もないもない無法地帯であった。メキシコ側で開発が遅れていて、無法者達の逃げ場所だったのだ。そんな土地で、首吊り判事として歴史に名を残したロイ・ビーンの半生をなんとも洒落た演出で、描いている。
自分が法律だと宣言し、自ら判事となり裁判を実行し、首吊りも行った人物というと非道な人間だと思いがちだが、ジョン・ヒューストンはそのように描いていない。ユーモアたっぷりに、極めて人間的に描いている。誰が悪いわけでもなく、誰が正義というわけでもない。
ペコス川を渡ってきたロイ・ビーン(ポール・ニューマン)は、立ち寄った酒場で身包みはがされてしまう。自分をだました酒場の人間をメキシコ人の少女マリー(ヴィクトリア・プリンシパル)に拳銃を借り、全員撃ち殺してしまう。
ロイは、その酒場に「ジャージー・リリー」と「ペコス地区西部地区裁判所」という看板を取り付け、酒場と裁判所を始める。自分のことを判事ロイ・ビーンと名乗り、流れ者を4人の保安官とバーテンダーに雇い、犯罪者からの押収金で彼らの給料を払う。
ロイは町の実力者になるが、ガス(ロディ・マクドウォール)という弁護士がやってきて雲行きが変わってくる。裁判には弁護士が必要なわけで、ガスがロイの裁判所の共同経営者になる。
ロイが店に張っていたポスターの女優リリー・ラングトリー(エヴァ・ガードナー)が、テキサスにやってくることになる。ロイは通信販売でタキシードを買い、ペコス川の東側のサン・アントニオに出かける。チケットがないので劇場に入れず、再びだまされて身包みはがされてしまう。
町に戻るとマリーは無事女の子を出産するが、産後の状態が悪く亡くなってしまう。その臨終でロイは、前からマリーが欲しがっていたオルゴールを枕元に置いた。ロイは酔っ払って遅れてやってきた医者を首吊りにしようとして、ガスにそれは犯罪だと言われる。ロイはガスに街を追われる。その後ガスが市長になり、西部一の石油王になるとロイの仲間達は、落ちぶれてしまう。
忘れ形見の娘ローズ(ジャクリーン・ビセット)が20歳になると、老人になったロイが馬に乗って現れる。昔の仲間を集めて、復讐を果たして町に火を放ったのが、ロイの最後の姿になってしまう。
発展した町は再び一軒家だけになり、鉄道だけが残りそれが以前と違うだけだった。その町に女優リリー(エヴァ・ガードナー)が、訪ねてくる。駅の前にはロイ・ビーン記念館があるだけだった。なんとも「物部たちの夢の宴」という雰囲気だ。再び、元のように戻ってしまった町の様子を見ると、人間のはかなさを感じてしまう。
エピソードが楽しい。最初に訪れる牧師にアンソニー・パーキンスが登場し、クマを連れたアダムスは監督のジョン・ヒューストンが演じている。そのクマが、ロイとマリーのペットになり、いっしょにピクニックに行き、ブランコやシーソー、水浴びをするのだ。また、クマにビールを飲ませたり、用心棒になったりとおもしろい。わては、このクマといっしょのシーンが一番好きだ。
関連記事