グッド・シェパード

2007年11月12日 22時40分
ロバート・デ・ニーロ監督・整作・出演、フランシス・フォード・コッポラ製作総指揮、エリック・ロス脚本の豪華スタッフ、豪華出演者で作られたCIA(中央情報局)に人生を捧げた主人公と家族の物語を映画化した。マット・デイモンとアンジェリーナ・ジョリー共演で、脇役陣もしっかりとした演技のできる出演者ばかりだ。国家のためにすべてを捧げた仕事に就いた主人公が、家族を犠牲にして任務を遂行しようとする。でも、その苦悩は想像以上のもので身を切られるような事態を経験することになる。細部まで凝りに凝った演出は、まるでドキュメンタリーを見るようでどっしりと重い見ごたえを残す。まさに、デ・ニーロアプローチそのものの監督ぶりですばらしい映画になった。

アメリカ東部の名門大学イェール大学は、ハーバード大学よりも保守派と言われており特に法科大学院を卒業するのは非常に難しい。大統領選を戦う候補者同士が、同じイェール大卒業ということもある。また、歴代の大統領や政府の閣僚などに卒業生が多い。そして、白人エリートを中心にスカル&ボーンズという秘密結社があるのは、公然の事実だ。第二次大戦直前のイェール大でも、主人公のエドワード(マット・デイモン)がそのスカル&ボーンズにスカウトされる。

スカル&ボーンズというのは、自分たちこそアメリカを導く羊飼いだという自覚を持っている人々だ。つまり、WASP(ホワイト・アングロサクソン・ピューリタン)が、入会の重要な条件になっている。でもこの映画でも、多少の例外(カトリックでも可)も認められている。この映画の中で、スカル&ボーンズに入る秘密の儀式も披露されており、全く驚いてしまう。そのスカル&ボーンズに入ったエドワードは、学生のうちにCIAの前身であるOSS(戦力事務局)にスカウトされる。

友人の妹のクローバー(アンジェリーナ・ジョリー)を妊娠させてしまったエドワードは、責任を取って結婚式を挙げる。そして、式のあとのパーティーの最中にイギリスに行くように命令を受けて、新婚ホヤホヤのままロンドンに行く。すると、イェール大で自分の手で教職を追われて退官したフレデリックス教授(マイケル・ガンポン)が、M16のエージェントの一人になって諜報活動を一から教えてくれる。でも、M16は知りすぎた教授を始末することになる。その厳しい現実にエドワードは、自分しか信じられないと悟る。

第二次大戦終了後、帰国したエドワードは一人息子のジュニアと出会い家族の絆も大切にしようと決意する。でも、妻のクローバーは秘密主義の夫の態度に疎外感を感じて、感情的になり怒りをぶつける。しかし、国のためにすべてを捧げる誓いをしたエドワードは、CIAの一員になり冷戦時代に突入したベルリンに旅立っていく。父と同じイェール大に進学した息子のジュニア(エディ・レッドメイン)は、同じCIAに入る。

やがて、1959年キューバで革命が勃発して、共産主義政権が誕生したのを阻止するために、61年にCIAを中心にビッグス湾事件を仕掛ける。現地の反共産ゲリラと共同して、ビッグス湾に上陸する作戦だったが、情報漏れで失敗してしまう。その情報漏れの捜査を続けていくと、エドワードは驚嘆の事実を突きつけられる。自分の子供を同じ諜報機関に入れるというのは、親子の情が仕事の差し支えになるので普通はタブーとされている。映画ならではの設定だが、エドワードの苦悩する姿は国のためにすべてを捧げるという忠誠心が高いから味わうのだ。


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