竜とそばかすの姫

細田守監督のアニメ作品だ。「サマーウォーズ」と同じようなネットの世界を描いている。インターネットは匿名性が担保されており、やろうと思えば普段の自分と全く違う人物を演じることもできる。現実に男性でもヴァーチャルな少女になりきることも可能だ。でも、どんなに取り繕っても元の人間の性格は出やすい。普段考えていることはどうしても、言動として出るものだ。反対に普段できないこともできてしまったりする。

この映画では、全世界で50億人が参加する仮想現実「U」という世界で、「As(アズ)」という分身になりきって生活している。アズは現実の人物の要素を少し採用して、作り出す。そのために、ある程度の現実と仮想の繋がりが発生する。歌手になりたい少女は歌姫になれるし、動物になりたい人は動物の姿になれる。高知の田舎に住んでいる高校生すず(中村佳穂)は、幼いときに母を中洲に取り残された子供を救おうとして亡くしてしまった。それ以来精神的成長を拒否していた。父親とまともに会話できないし、クラスの中でも目立つことを嫌っていた。

そこで、すずはネットを使いこなすルカちゃん(別役弘香)の誘いで「U」に参加して歌姫ベルとして登場する。人前では話もできないし歌も歌えないけど、仮想現実の正解では歌姫になることができたのだ。

中村佳穂の歌がすばらしい。楽曲全体しても斬新でキラキラしている。すべての人に癒やしを与えるような歌詞を聞いていると大変にいい気持ちになる。だんだん注目を浴びだすと、その正体を探る動きが出てくる。目立つ人はファンも集まるけど、アンチも増えるのだ。ベルが大規模なコンサートをしようとすると、竜が会場に乱入して台無しにしていしまう。背中に大きなキズを負った竜に世界中の関心が集まる。

後半は美女と野獣の物語になっていく。二人の間に恋を生まれないけど、引っ込み思案のすずが、大きな勇気で他人のためになろうとするのだ。これは自分の殻を突き破り、大人へと成長するのだ。竜はスポーツ選手などではなく、虐待されている子供だったのだ。その子供を救うためにすずが活躍する。見どころは、すずが自分の殻を破るシーンである。すずは、母がどうしてあの時に中洲に取り残された子供を助けるために行動したのかわかったと思う。何が大切かというと、その人間の人間力なのだ。人格や人柄なのだ。これはすばらしい映画だった。

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すずの母が取った行動は、かなり問題がある。以下追記に。

増水する川の中洲に子供が取り残された場合、ライフジャケットを着たからといって単独で飛び込むの非常に危険だ。まず、消防署に連絡する。そして、周りにいる大人と協力してロープを使うとかしないといけない。よくあるのが、最初に飛び込んだ大人が溺死して、ほかの大人によって子供が救助されるケースである。ライフジャケットがあるなら、きっとロープもあるはずである。自分の体にロープを巻きつけて、中洲までたどり着く。そして、中洲と岸をロープで連結して、子供をロープ伝いに救出する。または、ロープを中洲までなんらかの方法で届かせるのが重要だ。素人が飛び込むのは自殺行為に近い。

参考までの資料。

国土交通省河川局河川環境課「危険が内在する河川の自然性を踏まえた河川利用及び安全確保のあり方に関する研究会」による提言について
~恐さを知って川と親しむために~





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