アメリカン・グラフィティ

NHKBSで放送されたものを見た。ジョージ・ルーカス監督・フランシス・フォード・コッポラ製作という豪華な布陣だが、1973年公開当時はコッポラが「ゴッド・ファーザー」で売れただけでルーカスはまだ映画会社から相手にされていなかったという。脚本にもルーカスが名前を連ねていて、大変に低予算で作られた。でも、現在ではこの「アメリカン・グラフィティ」が青春映画のバイブルという存在になって、後のビックネームに俳優や監督が無名で出演している。41曲の音楽とともに、アメリカ映画のお宝的な存在だ。

1962年、カリフォルニア北部の小さな田舎町で高校生が卒業式を終えてこれから東部の大学へ行こうという前の晩の出来事を描いている。アメリカン・グラフィティ非公式事典というHPを少し参照した。新入生の歓迎ダンスパーティーも行われているので、これは9月に入ってからくらいの時期だ。カート・ヘンダーソン(リチャード・ドレイファス)とスティーブ・ボランター(ロン・ハワード)は翌日東部の大学入学のために、飛行機で飛び立つ予定だった。そこで、同級生たちが集まってパーティーをしようとメルズドライブインに集合する。

カートの妹でローリー(シンディ・ウィリアムズ)はスティーブと付き合っていたが、スティーブが大学に進学すると別れ別れになるので二人とも悩んでいた。また、やせていて牛乳瓶の底のようなメガネをかけたテリー(チャーリー・マーティン・スミス)は、スティーブからすごい車を貸してもらう。そして、デビー(キャンディ・クラーク)という大人びた女の子を誘い、助手席に乗せることに成功する。ドラックレースのチャンピオンで、年上のジョン・ミルナー(ポール・ル・マット)はキャロルという13歳の女の子を助手席に乗せるはめになる。

カートとスティーブとテリーが、一晩をどうすごすかが「ロック・アラウンド・ザ・クロック」の始まりから41曲の名曲に乗って描かれていく。ほんのささいなことなのだけど、青春の一ページとしては彼らの心にずっと残る思い出になる。同時進行でそれぞれのエピソードが描かれていて、どのシーンを取ってもアイディアが詰まった演出だ。ベトナム戦争が始まる前の、平和なアメリカの姿が生き生きと見られるのがこの映画のいいところだと思う。

カートは付き合っている女性はないが、奨学金2千ドルの小切手を持っている。何をしたいわけでもなかったけど、ファラオ団という暴走族の仲間に入る。そこで、ゲームセンターのお金をちょろまかしたり、パトカーの底にロープを引っ掛けていたずらをする。こんなことは、もう東部へ飛んで行ってしまうのでできたことだろう。

ロンは、ローリーと最初は車に乗って話している。ダンスパーティーでも、いっしょに踊る。でも、ちょっとしたすれ違いで一旦別れてしまう。二人が別々の行動をすることになるが、またそれが切ない。

テリーのする経験は、もっと過激でおもしろい。デビーがませた女の子だったので、かなりの背伸びをする。湖のそばに来て、キスをしたり、車を盗まれて歩くはめになったりする。お酒が欲しいと言われて、身分証がないので買うのに困るシーンがおもしろい。そして、ジョンは子供みたいなキャロルを相手にしながら、ボブ(ハリソン・フォード)とドラックレースをすることになる。

最後には、カートが一人でプロペラ式の飛行機に乗って大学に向かう。奨学金をもらって行く東部の大学というと、名門大学なのだろう。こんな夜は、二度と味わうことができない切ないものだ。誰でもこういう切ない思いではもっている。やっぱり、いい映画だなあ。



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