嫌われ松子の一生

中谷美紀の主演で公開されている「嫌われ松子の一生」を見た。詳しい鑑賞記は、後日ホームページにアップする。「ダ・ヴィンチ・コード」と比べるとお客さんの当初の動員は少なそうだが、映画を見た後の満足感はこちらの方が上だった。どういうことかというと、「嫌われ松子の一生」は不幸な主人公の人生を描きながら、見ていて悲しくならないのだ。

これは、不思議な感覚で悲劇を見て勇気をもらうとは、なかなか体験できないものだ。松子が人生の岐路で、どっちに進んでも地獄だと考えた時、人を愛する道を選んだことがすばらしいのだ。この内容をベタベタの演出で表現したら、こんな感動を得ることは不可能だ。

中島哲也監督の手腕だと思う。どうせ見るなら、わてはこっちをお勧めする。

2006年5月31日 5時31分
公開から3日後に見てきた。「下妻物語」(2004)で強烈なインパクトを与えた中島哲也が、山田宗樹原作の同名小説を監督・脚本をして映画化した作品だ。昭和22年生まれの普通の家庭に生まれた女性が、ひょんなことから転落人生に落ちてずっと幸せになれず平成13年に一人で亡くなった。このいかにも不幸な人生を送った松子を、中谷美紀が演じている。この女性は、一般的な団塊の世代が送ったであろう普通の人生とは違い、波乱万丈不幸にまみれている。でも、中島監督は不幸な物語の中にも小さな幸せを見つけて、アニメやミュージカル風の演出で楽しく見せてくれる。わては不幸な物語を見て、勇気をもらった始めての映画だ。

昭和22年川尻家の長女として生まれた川尻松子(中谷美紀)は、平成13年53歳で荒川河川敷で変死体で見つかる。弟の紀夫(香川照之)が遺体の確認に来て荼毘にふし、松子の住んでいたアパートの部屋の後始末を松子の甥になる笙(瑛太)に頼んで故郷に帰る。笙は松子の住んでいた部屋に行くと、ゴミの山だった。隣室の大倉修二(ゴリ)が出てきて、松子の過去を少しづつ語り始める。ここからは、甥の笙の視点で物語が進行していく。

子供の頃、病弱な妹久美(市川実日子)ばかり大切にされるので松子は疎外感を味わっていた。父の恒浩(柄本明)は笑顔を全く見せず、デパートの屋上で見たショーを真似をしてたこの口をすると父が笑う。これが家庭に笑いをもたらして、大切にされる妹に嫉妬しながらも恵まれた時代をすごす。でも、音楽の教師になって修学旅行に行ったとき、生徒の不祥事に巻き込まれて教師を首になる。この事件は、ほんのちょっとしたボタンの掛け違えが原因で松子がそれほど悪いとは思えない。

その後、小説家志望の八女川徹也(官藤官九郎)の女になり、次にその友人の岡野(劇団ひとり)の不倫相手に収まる。それも破綻して、今度は中州のソープ嬢になって店のトップにまで登りつめる。でも、ヒモが裏切ったので彼を殺害する。新幹線に乗ってみたかったので東京に逃げて、床屋の島津(荒川良々)のところに転がりこむ。でも、警察に捕まって刑務所に入る。美容師の資格を取得して、刑務所を出るが島津は結婚して子供もいた。その後、元教え子でやくざの龍洋一(伊勢谷友介)の女になる。松子は、洋一にアパートまで送ってもらった時、アパートの部屋に戻るのも地獄・洋一に付いて行くのも地獄という究極の選択をする。どうせ地獄なら愛を選ぶという松子の選択を、わては好感をもって見ていた。

この物語を中島監督は、歌あり踊りあり、松子のヘアスタイルとファッションの七変化など楽しい演出で見ることができる。その効果は、みじめな最期を遂げた松子の人生を悲観的なものではなく、見るものに生きる勇気と喜びを与える効果をもたらした。松子は戦後のベビーブームに生まれた団塊の世代だ。平成13年に53歳で亡くなっているが、今も生きていれば59歳くらいだろうか。松子と同じような人生を送るかどうかは、紙一重だったはずだ。幸いにも今生きている我々は、どんなに苦しくても明るく前向きに生きようではないか。わては、そんなことを感じた。


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この記事へのコメント
昨日、本は読んだんだ。映画どうしようかな?と思っているんだけど、どうだった?
Posted by 魔女っ子 at 2006年05月29日 13:07
わてとしては、独特の映像体験ができてよかったです。中谷美紀の七変化演技もいいし、不幸を悲しみだと感じさせない演出は、見るものに勇気を与えます。これは、いい表現だ。ゴロゴロ。
Posted by とらちゃん at 2006年05月29日 16:54
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